インドの移転価格税制強化への動き

2013 年 2 月 26 日 18:56
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
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 【ニューデリー】インドの税当局は、世界最大級の多国籍企業の一部に数十億ドルの税の徴収をはかるべく、各社はそれぞれのインド関連会社との取引額を適正に評価していないと主張している。

 

 しかしこの動きは投資を切望するインドと外国企業との関係悪化につながる恐れがあるほか、インドと米国の税当局間であつれきが生じる原因になっている。

 

 過去数週間にわたり、英蘭系エネルギー大手ロイヤル・ダッチ・シェルや英携帯電話大手ボーダフォン・グループは支払った分以上の納税義務があるとの通知を受けたと明らかにしており、それぞれインド関連会社と他の海外部門との株式取引における価格が低すぎるという指摘を受けたことを明らかにした。多国籍会社はしばしば海外部門の株式購入を通じて部門に資金を注入している。

 

 ギャップ、マイクロソフト、ゼネラル・エレクトリックを含む米企業もまた、各社のインド部門が親会社に提供するサービスをめぐってインドの税当局と同様の紛争を抱えた経緯がある。こうしたサービスにはコールセンターの運営や調査提供、繊維など原材料の購入が含まれる。

 緊張感は多国籍企業が世界中の関連会社を通じてその所得を報告すべきかをめぐって高まる議論を反映している。インドなど新興国経済はこうした所得のより大きな部分を取得したい構えだが、米国など多国籍企業が本拠を置く国は自国に利益や税金を保持するよう望んでいる。

 「移転価格」と呼ばれる慣行をめぐる紛争は数年にわたり続いており、しばしば当該国の税当局代表者間の交渉を通じて解決が図られる。

 

 しかし、米国とインドとの協議はこのところ特に荒れ模様となっており、米国がインドの税金にかかる不当な要求は増えていると主張していると交渉に詳しい関係者は述べた。米国の移転価格税制をめぐるインドとの懸案数は140前後と異例の高水準にあるという。

 

 米国税庁(IRS)で国際的税交渉を担当するマイケル・ダニラック氏は、最近の国際税務政策をめぐる会議でインドのプロセスを批判した。「この分野で現在進められている精査にはあまり合理的発想がないように見受けられる」と同氏は述べたと法律事務所フォックス・ロスチャイルドが運営する税ブログは明らかにした。

 

 米政府高官はダニラック氏の発言にかんするコメントを控えたものの、「米国は、堅調な投資環境を整備し、魅力的な海外投資をもたらす上で予測可能かつ透明な税制は常に肝要だと考える」と述べた。

 

 移転価格税制をめぐる紛争は、ここ数カ月にわたりインドの税制をめぐる投資家や企業の懸念を和らげるよう取り組んだインドのチダムバラム財務相にとって、進展を脅かすものだ。一方、インドにとって歳入を増やすことが急務となっている。政府は2017年までに財政赤字を国内総生産の3%にまで縮小することを目指している。2011年度(11年4月-12月3月)の同比率は5.9%だった。

 

 インドはさまざまな取引をめぐり多国籍企業を精査している。後方支援業務をインドで行う銀行、企業については親会社がそのインド関連会社に第三者へのサービス代価に等しい金額を支払うよう万全を期している。

 

 親会社は現在、関連会社にいわゆるコストプラスベース、つまり関連会社がカスタマーサービスの通話への応答などに活用した労働、部品にかかるコストにある程度の利益分を付加した金額を保証する。インドは多国籍企業の世界全体の利益の一定比率をインド関連会社に支払う制度への移行を望んでいる。これはインドにとって有益だが、米国はこれに難色を示していると協議内容に詳しい関係者は述べた。

 

 別の例では、インドの税当局は、多国籍の消費者家電会社がインドで高額の広告キャンペーンを展開する際、これは無固形価値を世界のブランドに移転するもので、インド関連会社に対する徴税に値すると述べた。LGエレクトロニクスはこうした事例について数年間戦っている。デリーの税審判所は先月、税当局の見解を支持した。LGインドの広報担当者はコメントを控えた。

 法人税専門の弁護士らは、インドの株式移転をめぐる精査は同国において前例がないほか、他の国と比較して異例のものだと述べた。