インドネシアの移転価格課税の執行 -ロイヤリティ取引の否認‐

【税務実践】否認されやすい項目対応(2)
2013 年 2 月 21 日
NNA - インドネシア版
DAINAI
日本語
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第211回

◇Q172:法人所得税税務調査において、親会社に対するロイヤリティーは否認されやすいと聞きます。弊社はインドネシア国内の会社に自動車部品を販売しています。親会社から有形・無形の技術的支援は受けていますが、ロイヤリティーは支払っていません。しかしながら先日、日本の親会社に税務調査が入り今後ロイヤリティーをとらなければ、海外に関わる諸費用や出張費用等を否認するとのコメントがありました。今年度から売上金額の3%程度のロイヤリティーを日本の親会社へ支払う事とすることになりました。どのようにしたらよいでしょうか。

 

A172:インドネシアにおいては、親会社向けロイヤリティーは親会社に対する利益移転であるとして否認されるケースが頻繁に発生し、税務裁判まで争うケースも多々あるようです。

一方日本の税務調査においても、海外進出・移転している海外子会社からロイヤリティーをとっていない場合には、海外子会社への出張費や技術指導に伴う有形実費金額を否認したり、ロイヤリティーをとるような行政指導をされます。日本の税務調査状況も担当税務調査官の「ロイヤリティー(使用料)」というものの理解度にはばらつきがあるようですが、海外進出によって日本の税収不足に悩む日本の税務局からの圧力は、ますます強くなるものとも思われます。

インドネシアの税務調査は非常にばらつきがある事から、仮にそのロイヤリティー性が正当な場合でも、税務署長より「親会社のロイヤリティーは否認せよ」という号令がかかった場合には税務調査担当官も命令には従わざるを得ないことから、どのように抵抗しても否認されてしまうケースがあります。

しかしながら、通常は「ロイヤリティーの正当性」「金額の妥当性」が証明できれば税務否認はされないものと考えます。過去においても否認されている事例としては、「親会社に利益送金したい」という目的の場合が多かったようです。

それでは、「ロイヤリティーの正当性/ロイヤリティー性が有る」ことの証明をどのように行うかとなると、次の通りの手段であると考えます。

ロイヤリティーとは使用料(通常は無形資産/知的所有権に対する使用料)であり、何に対する「使用料」あるいは「技術/ノウハウサービス」であるかを明確にして、契約書が締結されている事。契約書内容はサンプルとしては下記のサンプルに記載されているような具体的項目が必要になるものと思われます。また、そのロイヤリティーに係る対象取引が親子間取引ではない事(親子間取引の場合はそのロイヤリティー相当額は取引金額に含まれているという税務側の判断)も注意が必要となります。

 

<契約書の目的、業務範囲、金額部分サンプル>

第○条(目的)

1.J社はPT.ABCより依頼された、○○技術のノウハウ・生産技術の向上・生産性の向上に関する技術指導ならびにアドバイス業務を受託した。

2.J社はPT.ABCに対してJ社の保有する特許権(登録第XXX号)の使用を認める。

第○条(業務の範囲)

1.技術ノウハウ・生産技術の向上・生産性の向上に関する技術指導とは、○○に関する図面管理、金型技術、生産技術、品質管理技術、環境管理、安全衛生等に係る全ての業務をいう。

2.上記1を遂行するために、PT.ABC社は図面の確認業務依頼、その他諸技術/ノウハウ等の指導、確認業務を受ける。

3.特許権とは、登録番号XXX号をいい、PT.ABCが生産する△△に係る特許をいう。

第○条(ロイヤリティー金額)

業務に対するJ社へのロイヤリティー対価は、PT.ABC社は月間売上高に対する3%の金額とする。

 

<その他条項に続く>

また、それらの契約書に基づいた内容の実行内容を証明しなければなりません。

作成/管理図面や、技術指導・生産性向上・環境安全に係る具体的な書類、Q&Aの実績(メールでのやりとり)、日本より派遣された技術指導者の実績・技術指導実績書等、具体的な証明を常に準備・保管しておく必要があります。

親会社がインドネシア子会社が生産する製品に関連する特許(パテント)等を取得していれば説得力が増すのですが、具体的な保有がない場合でもとりあえずは上記に記載された契約に基づく実績書類を準備しておけば凌げるかもしれません。

次に金額の妥当性ですが、契約サンプルには売上金額の3%としています(親子間では3%程度は標準レベルか)。特に親子会社の場合、大きな金額とするのは避けるべきであると思われます。3%程度以下であれば安全性は増すものと思われますが、本来はX%と決めるまでに、日本の親会社が諸ノウハウやパテント金額を市場価格にて評価し、妥当な金額を探るべきでありましょうか。できれば具体的に日本親会社の海外子会社に対するサービス費用/支援費用を計算すべきであります。

 

どの部署がどれだけの支援、技術ノウハウ指導、技術移転に伴う費用概算額がどの程度に達し、X%金額のイメージと合致するかどうかの検証が必要です。

本社の海外子会社に対するサービス代金であったとしても、仮に関連会社ではない会社に同程度のサービスをしたとした場合にも、同程度の金額(公正妥当な金額)となるか、というのが判断基準になるものと思われます。

「移転価格」と同様に費用はかかりますが、税務コンサルタント等に依頼して、これらロイヤリティー金額が妥当である旨のTPドキュメントを作成してもらえば、より信頼度が増すものと思われます。

ロイヤリティーに限らず、書面にて約束・契約がされていることは重要であります。記載されている条項に沿って実行されていて、「なるほど妥当な取引をしている」と説明できる事が重要であります。