オーストラリア 移転価格税制の改正

【税務会計講座】移転価格税制の大改正(2)
2013 年 2 月 21 日
NNA-オーストラリア版
DAINAA
日本語
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第400回

■Subdivision 815−A

Subdivision 815−Aは2012年9月8日に成立したばかりの新しい 税法で、移転価格ベネフィット(課税所得が減少すること等)の概念に焦点を当て、オーストラリアと租税条約を締結している国との間でクロスボーダー取引を行っている企業に適用される。

企業が得た移転価格ベネフィットを否認する決定を行う権限が税務当局に与えられる。その決定により、課税所得の増加、欠損金の減少、またはキャピタルロスの純額を減少させる可能性がある。

同法は様々な観点で議論を呼んでおり、オーストラリアにおける移転価格規則の適用という観点で不確実性をもたらし、二重課税の可能性を増大させる虞がある。

同法の主要な項目は以下の通りである。

・改正は2004年7月1日以降に開始する税務年度から適用され、オーストラリア税務当局(ATO)に同法の遡及適用を可能としている。

・同法はATOに取引を再構築する非常に広範な権限を与え、独立企業が取引条件をそのように構築すべきことを示す必要性を強調している。

・不可能(または実務的に不可能)でない限り、税務当局は課税所得の調整がどのように行われたかの詳細を提示することが要求される。実務上、税務当局によって行われた調整の性質及び特性に関して様々な執行上の問題を生じさせる可能性がある。

・同法により税務当局は関連会社間取引での利子控除額の一部を否認することが可能となる。これは過小資本セーフ・ハーバーの限度にかかわらず、税務当局が負債水準が商業上現実的でないと決定する場合に税務通達2010/7において採用されたアプローチと整合している。

2012年11月に発表されたEDによれば、Subdivision 815−B〜Eの導入時にSubdivision 815−Aはその適用が停止される。Subdivision 815−B〜Eは、租税条約締結国だけでなく非締結国との間の状況にも適用され、更に関連会社間の取極めだけでなく非関連会社間の取極めにも適用される。

 

■EDの主要な問題点

EDの主要な問題点は、新税制がアームスレングス価格(arm’s length price)に焦点を置くのではなく、クロスボーダー条件(cross border conditions)に注目している点である。新税制は、これらの条件によってオーストラリアにもたらされる税金の額が、もしこれらの条件が、遂行している機能、使用資産、リスク負担を通じてのオーストラリアの事業活動から導かれるアームスレングスな貢献を反映したものであった場合の税金の額より少なくないことを確実にすることを求めている。

Subdivision 815−Bは、実際の条件(actual conditions)を無視してアームスレングスの条件(arm’s length conditions)に置き換えることが出来るようにATOに大きな再構築権限を付与している。

実際の条件がアームスレングスの条件と異なる場合、その結果として当該納税者は移転価格ベネフィットを得ているが、このような場合全てにATOの再構築権限が適用されると考えられる。

この点は、OECD移転価格ガイドラインの立場から逸脱している。ガイドラインは、再構築権限は例外的状況(exceptional circumstances)の下でのみ行使されるべしとしている。今回の改正は、OECD移転価格ガイドラインに準拠することが目的であるが行き過ぎがあると考えられる。