企業のタックスプランニングと無形資産管理

特集――攻防最前線、経団連税制委員長佐々木則夫氏(Taxウオーズ)

2013/09/03 日本経済新聞 朝刊

経団連税制委員長(東芝副会長) 佐々木則夫氏
企業からの提案 行動計画順守へ評価機関

 ――経済協力開発機構(OECD)の行動計画の評価は。
 「事業者がお金を払わずに、世界各地で行政サービスを受けるのは筋が通らない。ビジネスで得た付加価値に見合った税金をそれぞれの国で払うのは当然だ。OECDが行動計画をつくることは評価できる」

 ――行動計画に実効性が伴うかが課題です。
 「計画が順守できているかを評価する国際評価機関をつくってみてはどうか。あまりに過度な節税をしている企業に警告を発したり、企業がつくる節税戦略(タックスプランニング)を点検したりする仕組みだ」

 「ただ『すべての大企業にタックスプランニングを出させて査定する』といったルールは避けてほしい。自由なビジネスを制約することは許されないし、査定に備える企業側の経費や手間も膨大なものになる。それで企業の競争力を減退させたら、元も子もない」

 ――経団連は法人実効税率の引き下げを要求しています。
 「限度を超えた引き下げは国家にとっては逆効果だ。税率引き下げにより、国内外からの投資や企業立地を呼びこむことで、減税分の税収の埋め合わせをできるかが、引き下げの下限の目安なのではないか」

 「ある国だけが大きく税率を下げれば、投資がそこに集中して、(企業進出増による)税収増や雇用拡大などの恩恵を独占することもあり得る。税率をある一定の範囲内に収めるような国際的な合意を結んだ上で、あとは各国がその範囲内で伸ばしたい分野を育てる税制をそれぞれ考える枠組みができれば理想的だと思う」

 ――欧米の多国籍企業の一部は連結ベースの実効税率低下を目標に掲げているといいます。
 「過度な節税の背景には、『納税意識が薄い』場合と『巧みな税務戦略』の両面があると思う。日本は納税意識が高い企業が多く、税務戦略にはそんなに熱心ではないという印象だ。東芝もある新興国でのプロジェクトで、相手国の当局から『なんで税金を自ら払おうとするんだ』と不思議がられたことがあるくらいだ」

 ――知的財産など無形資産を低税率国に移して節税する欧米企業も目立ちます。
 「知的財産の付加価値をどう評価するかという問題だと思う。ある知的財産に対する使用料(ロイヤルティー)が本当にその知的財産に属しているのか、知的財産を使った製品側に属しているのか。これを見極めるのが大事だ」

 「知的財産自体の付加価値はあまりなくて、製品側に価値があるケースもありうる。その場合には製品から出た利益に応じて税金を払う仕組みができれば、不公平感はかなり薄れていくと思う」

 「日本企業の場合、他社より優れた知的財産を自分で使って、その知的財産をもとに生まれた製品で収益を上げている。売り上げや付加価値が目に見えるので、課税しやすい。言い換えれば、知的財産と実際のビジネスのつながりが強い。製造業では知的財産だけを他国に移すような節税手法を採るのは難しいだろう」

 ささき・のりお 1972年早大理工学部卒、東芝入社。原子力発電を主力事業に押し上げ頭角を現した。2009年に社長に就任。今年6月に副会長に。経済財政諮問会議の民間議員も務める。64歳。