利益分割法に関するOECD改定ガイダンス

OECDが近年更に注目を集めている取引単位利益分割法に関する追加ガイダンスを公表

 

  • 要旨

 2018年6月21日、OECDは「取引単位利益分圧法の適用に関する改定ガイダンス("Revised Guidance on the Application of the Transactional Profit Split Method")」(以下、「改定ガイダンス」)を公表しました。

 

 改定ガイダンスは、現行の2017年版OECDガイドラインの2章3部C(移転価格算定方法>取引単位利益法>取引単位利益分割法)に代わる指針となります。

 

 改定ガイダンスは従来のOECDガイドラインにおける 取引単位利益分割法(以下「PS法」)の考え方の根幹を変えるものではありません。しかし、改定ガイダンスではPS法が最適法になる可能性が高いケースとして、「取引当事者が経済的に重要なリスクを分担している場合、又は各々が密接に関連するリスクをそれぞれ負っている場合」を追加しています。特に「各々が密接に関連するリスクをそれぞれ負っている場合」は、異なる活動を行う取引の当事者間においては、むしろ「当たり前」に当てはまる状況であるともいえますので、PS法の濫用が横行しないように、納税者としても事前の説明準備の重要性が高まるものと考えられます

 

  • 背景

 PS法は、取引当事者間の利益配分を(一部的又は全面的に)直接算定する方法であり、利益の分割要因に分析者の主観が入りやすいことなど、実務上の問題点を多くはらむ一方で、適切に適応されれば有用な移転価格算定方法となります。

 

 このような点を認識したうえで、OECDはどのような状況にPS法が最適法となるかを含め、PS法の適用に関する指針の明確化や改善に向けた検討を行い、ドラフトの公表及びコメントの受付を経て、今般の改定ガイダンスの公表にいたりました。

 

  • 主な改正ポイント

 改正の主なポイントは端的に言えば以下の3点です。

  1. PS法が最適法になるケースについて
  2. PS法適用上の論点
  3. 上記の理解に資する事例の追加(OECDガイドラインの別添IIとなるもの)

 以下、上記の1、2について概略を解説します。

 

1. PS法が最適法になるケースについて

 以下の三つのケースを例示とともに挙げています。

①取引の各当事者がユニークで価値ある貢献をしている場合(例:各取引当事者がそれぞれ完成品の主要部品の開発等を行い、開発リスクをコントロールしているケース)

②高度に統合された事業活動の場合(例:金融商品のグローバル・トレーディング)

③経済的に重要なリスクを分担している場合又は各々が密接に関連するリスクをそれぞれ負っている場合(例:新製品の開発費用の負担を分担しているケース、製品の完成・販売のリスクを一方が負い、他方が同製品の主要部品の開発リスクを負っているケース)

 

2. PS法適用上の論点

 以下のような論点について言及されていいます。基本的に従来のOECDガイドラインから大きな変更はなく、より詳細な指針が示されているものと解されます。

①分割対象利益の「特定」について

②分割対象利益の「算定」について

③分割対象が利益の場合と損失の場合の取り扱い

④利益(損失)分割要因(資産ベースの要因と費用ベースの要因について)

 

 

  • 結びに

 移転価格調査の現場で、税務当局は 「所得配分の偏り」を見ています。TNMMの適用を認めているケースでもなお、二次的な検証として所得配分について論じているケースもあります。言い換えれば、PS法的な発想はもとより税務当局の念頭にあるともいえ、今回の改定ガイダンスを援用できる場面があれば益々PS法の議論になる可能性が高くなると言えるでしょう。

 

 しかしながら、恣意性が介入しやすいというPS法の短所を思い起こすと、徒にPS法の議論にすべきではない場面も当然あるでしょう。そのようなケースでは、やはり事前にPS法以外の移転価格算定方法が適切であることを説明できるように、ローカルファイル等の準備が重要になると考えられます。

 

(2018年8月30日)