スターバックスのグローバルタックスプランニングと移転価格対応

2013/01/10 日本経済新聞 朝刊 5ページ

 

 昨年12月、世界的なコーヒーチェーン、スターバックスの英国法人トップが声明を発表した。「2013年から14年にかけて、最低でも年間1000万ポンド(約14億円)の法人税を払う」――。
スタバに批判
 米国を本拠とする同社が英国に進出して14年。わざわざ法人税を支払うと明言したのは、これまで累計30億ポンド(約4200億円)の売上高に対し、法人税の支払いは860万ポンド(約12億円)にとどまっていたからだ。
 議会の調査でこうした事実が発覚。同社は「英国市場は競争が激しく、赤字が続いた」と説明したが、世論の反発を受けて異例の「納税宣言」に追い込まれた。
 スターバックスが法人税を節税できたのは、移転価格と呼ばれるグループ企業間の取引価格を操作する仕組みを活用したためだ。
 英国法人はコーヒー豆を割高な価格でスイス法人経由で仕入れ、コーヒー製法やブランドの使用料をオランダの欧州本社に納める。法人税率の高い英国で利益を圧縮する一方、税率の低いスイスやオランダに所得を移転して、企業全体としての納税額を抑える狙いがあった。
 グローバル競争が激しさを増すなか、いかに法人税の支払いを節約してキャッシュフロー(現金収支)を確保するか。「グローバル・タックス・プランニング」と呼ばれる国際税務戦略は多国籍企業にとって死活問題になりつつある。
 各国の税務当局とのあつれきは増している。当局はグループ内の取引価格が第三者との取引価格と比べて不当に操作されていると判断すれば、課税所得を故意に圧縮したとして追徴課税することができる。
 最大の問題は「適正な移転価格」の定義があいまいなことだ。中でも特許・商標の使用料や技術料、指導料など知的財産の分野では、客観的な価格の基準をまとめるのは難しい。
試行錯誤続く
 日本の国税庁によると、移転価格税制で「申告漏れ」と認定した件数は11事務年度(7月から翌年6月)で182件と、10年前の約3倍に増加した。「一時のような大型案件こそ減ったが、小口の案件が増えている」(税理士法人)。国税庁は取引価格の算定方法に関してあらかじめ企業の相談に応じる「事前確認制度」など環境整備を進めているが、企業の異議申し立ては絶えない。
 企業からみれば合理的な節税手段でも、財政悪化に悩む先進各国の税務当局は「自国で生まれた企業利益は自国に還元されるべきだ」との主張を強める。
 企業の多国籍化が加速するグローバル経済と、国民国家を前提にした法人税の枠組みの折り合いをどう付けるか。世界中で試行錯誤が続く。

 

 

代表コメント

グローバルでの連結税務コストを低減するタックスプランニングにおいては、主に低税率国に所得を帰属させることがポイントとなります。そのため、国際間の所得配分を司る移転価格税制にどう対応するかがグローバルでのタックスプランニングの鍵となります。

 

通常、相続税などでの節税方法については、相続税法上、規定が明確に定められており、その規定の網の目を抜けるような手法が取られることが多いように思われます。

 

一方で、移転価格税制においては、あえて規定自体は抽象的に作られており、実態を検証したうえで税務上の判断を下すようになっています。そのため形式だけを装ったタックスプランニングは通用しません。具体的な手法としては、スターバックスのケースのように販売するコーヒーの開発機能やブランディング等の無形資産の開発活動自体を低税率国に移転させ、そこに利益を帰属させるといった方法が多いものと考えられます。

 

近年では、人件費が低く優秀な人材を確保でき、マーケットが拡大するアジア諸国に開発機能や製造機能、販売機能を移転させていく流れにあります。そのような組織再編にあたっては、ビジネス上の観点に加え、日本との法人税率差による税務面でのメリットを検討しつつ、どの国に設立するのか、また設立後にどの程度現地法人に利益を帰属させることができるのかといった、移転価格税制上の観点も含めて判断していくことが重要であると考えられます。