HOYA、課税の一部取り消しで4億円の還付

無形資産の考え方をめぐる、長い、長い闘いへ・・・歴史的な争訟事案に。

 

HOYA株式会社は、2012年3月期から 2014年3月期までの3事業年度の法人所得税について、約52億円相当の更正処分を受けていましたが、2020年11月11日付けの不服審判の裁決にて約4億円の還付が認められることとなった旨が、同社のIR情報で明らかになりました。

 

同社は2007年3月期から 2011年3月期までの5事業年度について、2013年6月に移転価格税制に基づく法人税等の更正処分を受け、約85億円の追加納付をしていましたが、この課税についても不服審判を経て約5億円の還付を受けているとみられます(同社2018年3月29日付IR情報参照)。

 

報道などをみると、いずれの課税も、日本法人とエレクトロニクス関連製品の開発・製造を行う海外関係会社との間で行われていた取引に関する「無形資産」の帰属をめぐる課税(所得の源になる無形資産が日本側に帰属するか、海外子会社側に帰属するか)であることがわかります。

 

詳細は明らかになっていないものの、最初の課税に関する不服審判の裁決について、同社は「すべての処分の取り消し」を求める姿勢を示していることから、おそらく最初の課税を受けた後も移転価格の設定方針を変えることなく事業を継続し、後続年度についても同様の課税が発生した可能性が高いように思います。ちなみに、同社は今般の裁決についても、「すべての処分の取り消し」を求めていく姿勢を示していることから、後続年度についても同様の課税が生じる可能性は十分にあると考えています。

 

いずれにせよ、少なくとも2014年3月期までの課税については法廷に持ち込まれることが見込まれますので、HOYA社との税務当局との争いはさらに長期化することになります。決着がいつになるかはわかりませんが、本件は今般の移転価格税制の実務において重要性が高まる一方の「無形資産」の考え方を形作る、極めて重要な争訟事案となることは間違いなさそうです。

 

令和元年税制改正で無形資産の定義は一歩明確化されましたが、「解釈」の余地はどこまでも残り、したがって納税者と税務当局の間で見解の相違も生じ得ます。一方、HOYA社のように税務当局との長期的な議論に堪える体力がある企業ばかりではありませんので、まずは見解の相違が生じないように、ローカルファイル等によりきちんと納税者の立場を説明できるようにしておくことはもちろん、潜在的な課税リスクを事前に認識し、課税に至った場合にどのような対応を採るかについては速やかに判断できるようにしておくことが望ましいように思われます。

 

(2020年11月17日)