アメリカの移転価格税制

アメリカ(米国)

【米国の特徴】 

米国は移転価格税制の歴史が最も古い国の一つであり、先進的な議論がなされている。相互協議やAPAの経験も豊富であり、移転価格税制に基づいた準備を怠らなければ調査対応もスムーズに行うことができる。

 

 

 

 

【基本情報】

①税務当局

Internal Revenue Service (IRS)

 

②移転価格税制の課税対象

実質支配基準により判定。(持分割合については規定無し)

 

③移転価格課税の時効

原則は3年だが、更正所得金額が申告所得の25%を超える場合には6年間遡って課税可能。

また、無申告、悪質な租税回避の場合には更正期限なし。

 

④移転価格の開示義務

Forms 5471、5472及びSchedule UTP により移転価格に関する情報の開示が求められる。

また、費用分担契約を結んでいる場合、適格費用分担契約とするためには費用分担契約書に従った様式を申告書に添付して提出しなければならない。

Forms 5471、5472の提出を怠った場合または虚偽の記載があった場合には10,000USDのペナルティーが課される。(Schedule UTについてはペナルティー規定は無い)

 

⑤文書化資料の提出期限

調査が入った場合、要求日から30日以内に文書化資料の提出が求められる。文書化しなかった場合の罰金は無いが、文書化資料があれば、後述の移転価格課税に係るペナルティーを回避できる可能性がある。

 

⑥移転価格課税に係るペナルティー

取引ペナルティー(transactional penalty)と正味調整ペナルティー(net adjustment penalty)の二種類のペナルティーが課される。

 

・取引ペナルティー

取引ペナルティーについては、関連会社間取引価格が適正価格範囲外と判定され、更正後の適正価格比で50%以下と判定される(例えば輸出取引に於ける売値が適正値を下回るなど)か、も しくは200%以上(例えば輸入取引で、関連会社からの購入価格が適正値を上回るなど)変動した場合には、20%の過少申告加算税が課される。また、関連会社間取引価格が適正価格範囲外と判定され、独立企業間価格更正価格との比較で、乖離幅が25%以下もしくは400%以上に変動した場合には、40%の過少申告加算税が課される。

 

・正味調整ペナルティー

IRSによるIRC482条に関わる課税所得更正額が5百万ドル、もしくは更正後の収入変動率10%どちらか小さい方を超えた場合には、20%の過少加算税が課される。更に、この更正額がそれぞれ、2千万ドル乃至20%どちらか小さい方を超えた場合には、40%の過少加算税が課されることになる。

 

実務上、取引ペナルティーが課されることは多くないが、正味調整ペナルティーは多くの事案で課されている。合理的な文書化資料を提出期限内に提出し、認められることがペナルティーを回避する唯一の方法である。

 

⑦比較対象会社の選定

米国の独立企業の財務データや事業内容等の定性的なデータは充実しており、原則として米国の企業を選定することが求められる。

データベースについてIRSのAPA officeはCompustatを使用している。

 

⑧関税当局と税務当局の関係

関税当局と税務当局の連携のレベルは高い。

 

⑨相互協議

米国は相互協議の経験が豊富で二重課税を解消できる可能性は高い。

但し、相互協議の相手国の経験度合いにもよる。

 

⑩APA

ユニラテラルAPA、バイラテラルAPAともに可。

米国ではAPAの申請件数が多いため、処理が追いついていない状況であったが、2013年から担当者を倍増させ処理を加速させている。

 

⑪使用言語

英語

 

2016年度改正】  

2016年6月29日、財務省とIRSは、米系多国籍企業グループの年次国別報告要件に係る最終規則案[TD 9773]を公表した。


最終規則は、直前会計期間の連結グループ売上高が8億5千万米ドル以上の米系多国籍企業の究極の親事業体に適用される。様式は、OECDの行動13の最終報告書に沿っている。なお、本規則には、同最終報告書にあるマスターファイルは含まれていない。


本規則は、最終的親会社の2016年6月30日以降に始まる税務年度を報告対象期間として適用されます。国別報告書は、年度の所得税申告と併せて提出する義務がある。報告義務に違反した場合は、10,000以上/50,000以下のペナルティーが科せられる可能性がある。

 

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