5分で分かるローカルファイル

ローカルファイルとは?

ローカルファイルは、海外のグループ会社との取引についてまとめた文書です

 

多国籍企業のグループ内取引を悪用した課税逃れへの対抗策等が議論されたBEPSプロジェクトにおいて、移転価格税制の観点から企業が整備すべき資料として、マスターファイル、国別報告書、ローカルファイルという三層構造の文書が提唱されました。

 

これを受けて、日本でも移転価格税制に関連して文書化すべき資料等に関する規程が整備されました。このうち、ローカルファイル(ないしそれに相当する資料)は、取引規模に関わらず、税務調査官の求めに応じて提出すべき資料として規定されたものです。

 

ローカルファイルでは、海外のグループ会社との取引に関する事実関係とともに、移転価格税制の観点で対象となる取引について分析した結果を整理します。

平成28年度税制改正と日本のローカルファイル

調査の方向性を決めるローカルファイル。税務当局による一方的な課税の回避にも必須。

 

法令に関わらず、国を跨いだグループ企業間取引について移転価格税制の観点からまとめた資料を作成する実務は古くからありましたが、平成22年度税制改正で移転価格に関する税務調査の際に提出を求められる書類が明確化されました。そして平成28年度の税制改正では、この移転価格文書化資料の作成が義務化されました。日本では、申告書の別表等とは別に、移転価格税制上作成等が求められるに文書(移転価格文書)に関する制度について、「(移転価格)文書化制度」と呼んだりしますが、海外でも「(移転価格)ドキュメンテーション(Documentation)制度」などとして広く導入されています。

 

平成28年度の税制改正により、移転価格文書化制度は3層構造の文書を規定するようになりました。具体的な文書には、全ての海外進出企業に作成が求められる①ローカルファイルと、連結売上高1,000億円以上の企業に作成が求められる②マスターファイル、③国別報告書があります。

  

ローカルファイルは各海外子会社との取引について詳細な事実関係の説明と、移転価格分析を行った結果を記載することが求められます。ローカルファイルは、その会社が移転価格税制に即して海外子会社との取引を行っているか否かを判断するために必要な書類となり、会社がこれを準備していない場合、税務当局は「推定課税」と呼ばれる一方的な課税を行うことが可能となります。

 

具体的な課税判断は、主にこのローカルファイルに基づいて議論がなされます。特に中小・中堅企業にとってはこのローカルファイルの作成が最も重要となります。移転価格分析には専門知識と経験が必要とな他、分析には専門のデータベース等を必要とするため、ローカルファイルの作成は専門家に依頼することが一般的となっています。

 

なお、マスターファイルと国別報告書はグループ全体の事実関係を開示する資料であり、主に大企業が世界全体でどこの国で何をしているのか、またどこの国に所得を多く配分しているのかを税務当局が把握するための資料となります。提出義務者となる企業が各資料を提出しない場合には、罰金が課されることとなります。

 

ローカルファイルの主な内容

取引に関する事実関係と、移転価格税制独自の分析プロセス&結果を記載します

 

ローカルファイルには主に以下のような内容を記載することになります。具体的な文作業の進め方についてはこちらをご覧下さい。 

 

国外関連取引の内容に関する書類(事実関係)

・取引に係る資産の明細・役務の内容

・取引において双方が果たす機能・負担するリスクに係る事項

・取引において使用した無形資産の内容

・取引に係る契約書又は契約の内容

・取引の対価の額の設定方法、設定に係る交渉の内容

・取引に係る損益の明細

・市場に関する分析、その他市場に関する事項

・関連者双方の事業方針

・取引と密接に関連する他の取引の有無及びその内容  等

 

<国外関連取引について法人が算定した独立企業間価格に係る書類(分析プロセス&結果)>

・選定した移転価格算定方法、選定理由、その他独立企業間価格を算定するに当たり作成した書類

・採用した比較対象取引等の選定に係る事項、比較対象取引等の明細

・利益分割法を選定した場合の関連者双方への帰属金額の算出をするための書類

・複数の国外関連取引を一の取引として独立企業間価格の算定を行った場合の理由及び各取引の内容を記載した書類

・比較対象取引等について差異調整を行った場合の理由及び方法を記載した書類  等

ローカルファイルの意義

ローカルファイルの本質は、自社の移転価格対応方針を決めることです

 

平成28年度の税制改正により、ローカルファイル等の移転価格文書の作成が義務化されたため、税務コンプライアンスの確保・法令順守のためには、文書化資料の作成に取り組まなければなりません。

 

また、移転価格課税を受けた場合、数千万円~数億円以上の二重課税状態となるので、そうした税務コストを削減する意味でも、特に移転価格調査における議論の出発点となるローカルファイルは、海外進出企業にとっての必須アイテムです。

 

しかし、最も重要なことは、形式的な対応ではなく、ローカルファイル等を作成するプロセスの中で、自社にとって適正なグループ内取引価格や所得配分を検討していくことです。ローカルファイル等の移転価格文書は、企業が移転価格税制について検討した結果をまとめたものであって、重要なのは、移転価格税制への対応方針をいかに決めるかというところになります。

 

弊所では、ローカルファイル等の移転価格文書の作成はもちろん、移転価格ポリシーの構築を含めてお手伝いさせて頂きます。まずはお気軽にお問い合わせください。