移転価格解説

海外寄附金課税制度と移転価格税制①(寄附金規定)

国外関連者への寄附金に関する規定

国外関連者への寄附金の損金不算入については、租税特別措置法において以下のように定められています(2022/8/15時点)。

租税特別措置法六十六の四3項

法人が各事業年度において支出した寄附金の額(法人税法第三十七条第七項に規定する寄附金の額をいう。以下この項及び次項において同じ。)のうち当該法人に係る国外関連者に対するもの(恒久的施設を有する外国法人である国外関連者に対する寄附金の額で当該国外関連者の各事業年度の同法第百四十一条第一号イに掲げる国内源泉所得に係る所得の金額の計算上益金の額に算入されるものを除く。)は、当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。この場合において、当該法人に対する同法第三十七条の規定の適用については、同条第一項中「次項」とあるのは、「次項又は租税特別措置法第六十六条の四第三項(国外関連者との取引に係る課税の特例)」とする。

また、移転価格事務運営要領の制定について(事務運営指針)第3章(調査)においては、以下のように記載されています(2022/8/15時点)。

国外関連者に対する寄附金

3-20 調査において、次に掲げるような事実が認められた場合には、措置法第66条の4第3項の規定の適用があることに留意する。

イ 法人が国外関連者に対して資産の販売、金銭の貸付け、役務の提供その他の取引(以下「資産の販売等」という。)を行い、かつ、当該資産の販売等に係る収益の計上を行っていない場合において、当該資産の販売等が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与に該当するとき

ロ 法人が国外関連者から資産の販売等に係る対価の支払を受ける場合において、当該法人が当該国外関連者から支払を受けるべき金額のうち当該国外関連者に実質的に資産の贈与又は経済的な利益の無償の供与をしたと認められる金額があるとき

ハ 法人が国外関連者に資産の販売等に係る対価の支払を行う場合において、当該法人が当該国外関連者に支払う金額のうち当該国外関連者に金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をしたと認められる金額があるとき

(注) 法人が国外関連者に対して財政上の支援等を行う目的で国外関連取引に係る取引価格の設定、変更等を行っている場合において、当該支援等に基本通達9-4-2の相当な理由があるときは、措置法第66条の4第3項の規定の適用がないことに留意する。

法人税法上の寄附金と移転価格税制上の寄附金の違い

寄附金規定については、通常の法人税の規定が適用されるため、更正期限は法定申告期限から5年となります。一方、移転価格税制での更正期限については、租税特別措置法として別枠で定められており、独立企業間価格と異なる対価の額に基づいて申告した法人税の法定申告期限から7年となっています。

実務上、移転価格の税務調査は長期に及ぶことが多く、調査期間が1年以上かかるケースも少なくないことから、調査期間中にもっとも古い調査対象年度の更正期限が過ぎ、6年間分(あるいは調査対象期間マイナス1年分)の更正を行うケースも多いのではないかと思われます。

なお、寄附金課税制度の全体像については移転価格解説の「寄附金課税」 をご参照ください。