移転価格解説

無形資産の共同開発と移転価格

概要

一つの開発テーマについて、親会社と国外関連者が共同開発する場合や、一つの商標について親会社がデザイン・企画・立案を行い、国外関連者が広告宣伝などにより認知度を高める場合など、一つの無形資産を複数の者で形成・維持・発展させるケースもあります。 

このような場合、無形資産の所有者は、当該無形資産の構築に貢献した者が、それぞれの貢献割合に応じて共同所有することとなります。通常、この貢献割合については、当該無形資産の構築にあたって負担した費用の割合となります。この場合、当該無形資産の使用により生じた所得についても、当該無形資産の構築に貢献した各者について、それぞれの貢献割合に応じて分配されることとなります。

税務調査における見解の相違のポイントと対応

①海外子会社の活動が重要な無形資産の構築活動であるのか否か

税務調査において海外子会社への超過利益の帰属が認められるには、海外子会社が行う開発活動が、企業グループの高い収益性の実現に貢献する重要な無形資産の構築活動にあたるかどうかという点について、明確な説明が求められます。例えば、現地化開発の場合、単に現地の規定に合わせて商品のサイズを変更したり、製品の表示を現地語に翻訳する程度のことであれば、通常の活動の範囲内として、無形資産の構築活動としては認められないケースもあります。どの程度の活動であれば重要な無形資産の構築活動にあたるかは明確な基準はありませんが、客観的に見て、親会社の開発活動と比較しても海外子会社の活動が収益に大きく貢献しているということが明らかである必要があるものと考えられます。

税務当局の理解を得るため、できる限り客観的な情報やデータ等で、海外子会社の利益への貢献を立証できるよう準備しておくことが望ましいと考えられます。

②海外子会社が重要な無形資産の所有者であるのか否か

海外子会社が本社に開発委託をしている場合や、開発費の負担をしている場合、前述の通り、海外子会社が当該開発の統括・管理をしていなければ海外子会社が重要な無形資産の所有者とは認められません。  海外子会社が、そのような統括・管理活動をしていることを税務調査の際に立証できるよう、メールでのやり取りや議事録などを作成し、保存しておくことが望ましいと考えられます。