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AMIPARTNERS様との合同オンラインセミナー

日独両国における移転価格税制の最新動向

2021年3月5日 日本時間17:00~19:00/ドイツ時間9:00~11:00開催

セミナー概要

大手コンサルティングファームでの豊富な経験を有するプロフェッショナルを擁するドイツを拠点とする税務・財務・法務の専門家集団、AMIPARTNERS様と、「日独両国における移転価格税制の最新動向」をテーマに合同オンラインセミナーを開催いたします。

セミナーでは移転価格税制の基礎から、日独両国における制度の特徴や最新動向を解説しながら、既に両国間の移転価格に関する実務に携わっていらっしゃる方々や、将来の事業展開を見据えて両国の移転価格動向に関心をお持ちの方々に押さえていただきたいポイントについて、分かりやすく解説いたします。詳細は末尾をご参照ください。

講師:

GMT移転価格税理士事務所 代表パートナー 田島 宏一

GMT移転価格税理士事務所 パートナー   西村 憲人

AMI Advisory GmbH    パートナー   中尾 弘太郎

AMIPARTNERS様のご紹介:http://www.amipartners.de/jp/

お申込み方法

①貴社名、②お申込者氏名(日本語・ローマ字表記)をご記入の上、2月26日(金)までに、nishimura@itenkakaku.jp宛てにご参加希望の旨をお知らせください。受信後、ご連絡いただいたメールアドレス宛にZoomのリンクをお送りいたします。

セミナー詳細のご案内

企業研究会セミナー

いま求められる移転価格税制への対応とは?

~移転価格税制の最新動向と実務上のポイント~

講師:GMT移転価格税理士事務所 代表パートナー 田島 宏一

パートナー 西村 憲人

開催日:2021年2月22日(麹町)14:00~17:00

*ご視聴のお申し込みは企業研究会のサイトよりお願いいたします。

企業研究会セミナールーム(東京・麹町)

・一般の方 : お一人様につき 37,500円(税・資料代込み)

・正会員 :お一人様につき35,200円(税・資料代込み)

近年、本社と海外子会社との取引について、対策の取られていない中堅企業を中心に移転価格課税を受ける企業が非常に多くなっています。1件あたりの課税金額も従来に比べると小さなものが増えていますが、実際に課税に至ると数千万円から数億円と企業経営へのインパクトも大きいことから税務担当者にとっては国際税務への対応が必須の事項となっています。

そこで本セミナーでは、主に移転価格の実務に携わる実務担当者を対象に、移転価格税制の基礎知識や実務について解説します。気になる税務調査の執行状況のほか、国内外における文書化制度の状況や、本邦令和元年税制改正のポイントを踏まえて、実務上の要点と必要となるアクションについて検討していきます。

●講義内容● 

1.移転価格税制の基礎と実務

・移転価格調査の動向

・移転価格税制の概要

・見落としがちな課税リスク(移転価格課税と寄附金課税)

・移転価格調査の実務

・課税を受けた場合の救済措置

・新型コロナウイルスが実務に及ぼす影響

2.国際税務の動向とBEPSプロジェクト後の移転価格文書

BEPSプロジェクトと国際税務の動向

BEPSプロジェクト後の移転価格文書

・日本における文書化制度の概要と実務上のポイント

・各国の文書化要請(中国・東南アジアにおける文書化制度の概要)

3.令和元年度税制改正の概要と実務への影響

・更正期間等の延長

・比較対象取引との差異調整方法の整備

・独立企業間価格の算定方法の整備(DCF法の導入)

・無形資産関連規定の整備

4.おわりに

・本社主導の移転価格整備の重要性

RIDセミナー(WEBセミナーのご案内)

移転価格税制の動向と実務

~いま求められるアクションとは?~

講師:GMT移転価格税理士事務所

代表パートナー 税理士  田島 宏一

パートナー   税理士  西村 憲人

配信日:2020年2月1日~2月28日(1か月間)

*ご視聴のお申し込みはRIDセミナーサイトよりお願いいたします。

・一般の方 : お一人様につき 10,000円(税込み)

・e-Disclosure Clubプレミアム会員様 :お一人様につき 8,000円(税込み)

近年、本社と海外子会社との取引について、対策の取られていない中堅企業を中心に移転価格課税や寄附金課税を受ける企業が非常に多くなっています。

海外子会社との取引金額が50億円以下であっても、移転価格及び寄附金課税は行われるため、取引金額が数千万円~数億円以上の場合には対応が必須であると考えます。

そこで本セミナーでは、移転価格税制の基礎から文書化制度を中心とする国内外の動向、そして令和元年度税制改正やコロナ禍が実務に及ぼす影響といったホットトピックも踏まえながら、実務上の要点と今実務で求められるアクションについて、初心者にもわかりやすく解説します

●講義内容● 


 1.移転価格税制の基礎と実務

◆ 日本の移転価格税制の制度概要

◆ 移転価格調査の動向

◆ 見落としがちな課税リスク(移転価格課税と寄附金課税)

◆ 移転価格調査の実務

◆ 課税を受けた場合の救済措置

◆ 新型コロナウイルスが実務に及ぼす影響

 2.国際税務の動向とポストBEPSプロジェクトの移転価格文書

BEPSプロジェクトと国際税務の動向

BEPSプロジェクト後の移転価格文書

◆ 日本における文書化制度の概要と実務上のポイント

◆ 各国の文書化要請(中国・東南アジアにおける文書化制度の概要)

 3.令和元年税制改正の概要と移転価格実務への影響

◆ 課税リスクが増大?更正期間等の延長と四分位レンジの使用について

◆ 節税スキームが困難となる?無形資産の取り扱い

 4. おわりに

◆ いま求められる移転価格税制対応とは?

◆ 移転価格対応にかかる費用と効果

フィリピンが移転価格税制を再改正

【要旨】

フィリピンは202012月に移転価格に関する新通達を公表し、発表時点をもって有効になっています。

内容を一言でいうと、文書化関連要請の緩和措置です。具体的には、関連者間取引を行う全納税者に所定のフォーム(BIR Form1709)および移転価格税制関連文書の提出義務が課されていたところ、BIR Form1709の提出義務者が限定され、ローカルファイル等の移転価格税制関連文書の提出義務が保管義務に緩和されました。

以下、各点の要旨をお知らせします。

1. BIR Form1709について

BIR Form1709は国内外関連者間取引に関する詳細を取りまとめたフォームです。20207月の関連規定導入時点では、同フォームの提出義務は関連者間取引を行う全納税者に課されていましたが、今般の改正を受けて、以下に該当する納税者のみが提出義務を負うこととなりました。

Ÿ 大規模納税者(フィリピン当局(Bureau Of Internal RevenueBIR)がLarge Tax Payerに認定した納税者)

Ÿ BOI(投資委員会)、PEZA(フィリピン経済区庁)等から税務上の恩典を受けている納税者

Ÿ 直前2期及び当期の3期連続で営業損失となっている納税者

Ÿ 上記のいずれかに該当する納税者との関連者間取引がある納税者(経営幹部との取引を除く)

2. 移転価格税制関連文書について

 改正前は関連者間取引を行う全納税者がローカルファイル等の移転価格税制関連文書をBIR Form1709に添付して提出することとされていましたが、今般の改正で一定の要件を満たす納税者を対象とした保管義務となりました。ただし、税務調査中にBIRが提出を受けた場合には、要求を受けてから30日以内に移転価格税制関連文書を提出する必要があります。

 保管義務が課される納税者は、以下の金額基準を満たすものとされています。

Ÿ 年間売上高/総収入が150百万ペソ(約3.3億円)超かつ国内外関連者間取引金額が90百万ペソ(約2億円)超。なお、取引額には以下が含まれる。

Ø 関連者間で受け払いした金銭及び債権・債務金額(経営幹部との取引、配当・支店利益送金を除く)

Ø 借入残高及び関連者に対するその他債務

Ÿ 上記以外で以下の関連者間取引がある納税者

Ø 課税年度内の有形資産販売額が60百万ペソ(約1.3億円)超

Ø 課税年度内の役務提供、利息支払い、無形資産取引、その他関連者間取引の金額が15百万ペソ(約0.3億円)超

Ø 前年度に上記に該当し、移転価格文書の保管義務が課されていた場合

 なお、保管義務がある文書は以下の通りです。

Ÿ 契約書等、関連者間取引を証する資料

Ÿ 該当取引につき源泉税を納めている場合にはその納税証明書

Ÿ 該当取引につき外国税額を納めている場合にはその納税証明書

Ÿ (あれば)APAのコピー

Ÿ 移転価格文書(ローカルファイル)

OECDが新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた新ガイダンスを公表

【要旨】

 20201218日、OECDは「新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大に関する移転価格執行ガイダンス:(原題:Guidance on the transfer pricing implications of the COVID-19 pandemic)、以下本ガイダンス」を公表しました。

 本ガイダンスは1372月には139に更新)の国・地域の同意に基づいたもとされています。これらの国・地域には、移転価格税制やその執行について必ずしもOECDの考え方に足並みを揃えてこなかった中国、インド、インドネシアといった国々も含まれ、広範なコンセンサスが形成されていると言って良いかと思います。

 本ガイダンスの位置づけですが、OECD移転価格ガイドライン2017年版(以下”OECDガイドライン)を逸脱するものではないとされ、新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大(以下パンデミック)により生じたり、深刻化したりした(移転価格上の)問題に対し、あくまで独立企業間原則及びOECD移転価格ガイドラインをどのように適用するかという点に焦点を当てたものとして位置づけられています。

 内容としては大きく以下の4つのポイントにアプローチしています。

1. 比較可能性分析

2. 損失及び新型コロナウイルス感染症特有の費用の配分

3. 政府支援プログラム

4. 事前確認

 以下では上記のポイントについて、本ガイダンスにかかれている内容についてかいつまんで解説します。

【本ガイダンスのポイント】

1. 比較可能性分析

 

 本ガイダンスは、通常比較可能性分析が現実的に入手できる過去のデータに基づいて行われる中、パンデミックが影響を及ぼしている直近年度について、実務上どのような検討をし得るか、という点について様々なアイディアを提供しています。

 

 具体例としては、以下のようなものが挙げられています(他にもさまざま挙げられています)。

Ÿ 2020年の実績(の妥当性)のサポ―ト材料になり得る情報等

 パンデミックが関連者間取引に及ぼした影響(売上・操業度の変化、パンデミックに伴い発生した追加費用、政府による支援、予算からの乖離など)の測定が実績のサポートに役立つ可能性があるとしています。つまり、パンデミックの影響なかりせば、異常な利益水準・所得配分になりませんよ、という説明ができれば移転価格の妥当性を説明できる可能性がある、ということを言っているものと考えられます。

Ÿ 検証対象と同時期の比較対象データの利用をあきらめる
 検証対象となる企業がパンデミックに関するリスクを負っていなければ、そもそも2020年の検証において同時期の比較対象の情報が必要にならないケースもあるとしています。

 納税者としては、関連者間取引の契約書をレビューして、例えば不可抗力による損失負担の条項で検証対象企業がその負担を負っていなければ、必ずしもパンデミックの影響を受けている企業の2020年の情報を比較対象データとして使用する必要はないものと思われます。

Ÿ 情報不足を前提として柔軟な分析を行う

 納税者が誠意をもって独立企業間価格を決定しようと努力している場合には、紛争(税務当局にとっても負担が大きい相互協議など)を最小現に抑えるために、税務当局は実務上、以下のようなアプローチを考えられるのではないか、としています。

Ø 合理的な事業上の判断に基づいて移転価格が設定されていることを確認する
補足:納税者が判断の合理性を説明できるように、情報の入手や合理的かつ適切な価格設定の手続きを行っていることを示す必要あり

Ø 実績検証アプローチの容認
補足:2020年度の終了後、その税務申告までに入手可能な情報に基づき事後的に移転価格分析を行い、独立企業間価格で取引が行われたこととなるように税務調整(補償調整)する柔軟性を納税者に与えたり、補償調整に伴う二重課税回避のための相互協議の申請余地を保証したりすべきとしています。日本では本項執筆時点でその旨法令・ルール化されていませんが、移転価格税制の執行上OECDガイドラインが参考にされることとなっていることから、補償調整も選択肢の一つになるかもしれません。なお、申すまでもありませんが、補償調整の可能性があるならば、事前にその旨の取り決めをしておくことが望ましいです。

Ø 複数の移転価格算定方法を適用
補足:あくまで強制ではないとしています。

Ÿ その他

Ø 他の危機があった時期のデータの利用(いわゆるリーマンショック時のデータの参照など)

Ø 危機時データの除外(ロックダウン中のデータを分析対象から除外するなど)

Ø 既存の比較対象の見直し(選定基準の見直し、損失計上企業の選定など)

2. 損失及び新型コロナウイルス感染症特有の費用の配分

 
 OECD
ガイドラインは単純な機能・リスクプロファイルの企業は、長期的に損失を被ることを想定しないとしつつ、だからといって短期的に損失を被る可能性までを否定するものではないとの立場を明確にしています。

 

 また、本ガイダンスは移転価格では原則的に「独立企業間であればどうか」という考え方を維持しており、既存の関連者間契約の見直しのほか、パンデミックを受けて突発的に発生したコストの配分の検討やそうしたコストを比較可能性分析上考慮することなども、有意義な移転価格対応につながる旨、示唆しています。

3. 政府支援プログラムの取り扱い

 補助金支給等、経済的な影響がある政府の支援の影響については、比較対象を用いた分析上も考慮すべきものとされています。

 また、政府の介入はその市場固有の条件であるとされ、その影響については、そもそもそれが市場の優位性といえるものであるか、また政府支援の便益が第三者の顧客やサプライヤーにどの程度転嫁されるか、といったポイントを踏まえて、分析上考慮すべきとされています。

 本ガイダンスはこのほかにも様々な考慮事項を挙げていますが、いずれにせよ、政府による支援の影響を検証し、それが関連者間の取引価格にどのような影響を与えるか、独立企業間であればどうなるかを考えながら検討していく必要があるということであると考えられます。また、比較対象を用いて検証する場合にも、合理的な比較検証ができるように、政府による支援の影響を考慮することを忘れない、ということがポイントかと思います。

4. 事前確認

 パンデミック関連の問題については、一か国ではなく関係当事国を巻き込むことで協調的に対応を図ることを推奨しています。

 

 APAの締結は一部の大手に多いため、ここでは詳述を控えますが、既存のAPAであればその諸条件の妥当性に懸念があれば関係当局にアプローチすることなどが推奨されており、交渉中のAPAについては、APA期間を含め、合理的な取極めの実現を奨励しています。

【おわりに】

 冒頭で述べた通り、本ガイダンスはこれまでの移転価格の考え方を変えるものではありません。

 しかし、本ガイダンスが多くの国・地域の合意に基づくものであることから、多くのケースでは通常食い違いがちな各関係当事国で議論の目線を合わせやすくなることが期待されます。また、納税者の皆様が懸念されている実務上論点について、具体例を交えながらどのような検証をし得るかが論じられているという点において、有意義なガイダンスになるのではないかと思います。

 ただ、例によって、事前、あるいはタイムリーに分析を行い、文書化をはじめとする説明準備をしておくことが前提となっていることには変わりありません。グループとして、このパンデミックの影響をどのように捉え、移転価格に織り込んでいくか検討すること、またその経営判断のプロセスを説明できるようにしておくことが、移転価格対応上の処方箋になるのではないでしょうか。

米国がAPA・MAP事案における所得調整の方針を変更

米国当局(IRS)の事前確認・相互協議プログラム(APMA)が、いわゆる”テレスコーピング”を制限する方針を公表しました。

“テレスコーピング”とは、事前確認(APA)や相互協議(MAP)における協議結果を受けて所得を調整する際に、事務手続きの簡便化等を目的として調整対象年度とは異なる課税年度に当該調整額を反映することを言います。

米国では2017年に大幅な法人税率の引き下げを行っていますので、実際の調整をこの改正の前後いずれのタイミングで行うかによって、納税者の追加納税額や還付額に影響がでてきます。そのため、上記の方針変更に至りました。

具体的な変更内容は以下の3点です。

  • 納税者は原則IRSが指定する年度の修正申告を実施
  • 2017年12月31日以前に開始する複数事業年度が事案の対象となっている場合、納税者はその最終年度に必要な調整を一括して行うことをリクエストできる
  • 課税所得の調整額が1,000万ドル以下の場合には、IRSの裁量で太陽機関の最終年度又はそれ以降の課税年度に調整を行うことが認められる。なお、IRSはこの取り扱いを認めるかどうかの決定に当たり、税額得ほ影響や事務負担等を総合的に考慮する。

今回の変更はリーズナブルな変更のように思います。IRSはこのように状況に応じて指針を変えるので、やはり最新の指針を把握し、タイムリーに対処しておくことが重要であると言えます。

税務弘報2021年1月号に代表の記事が掲載

同誌の人気企画『続 税務調査之心得50』に近年の課税動向

弊所代表の記事が2020年12月4日発売の税務弘報2021年1月号(VOL.69/NO.1)に掲載されました。

同誌の人気企画『税務調査之心得50』の続編への寄稿ですが、その中で近年の課税動向や、税務調査の事前準備や調査対応上のポイント等について解説しています。詳しくは本誌をご参照下さい。

(2020年12月4日)

タイが移転価格に関する追加規定を導入

対象取引や優先適用される移転価格算定方法等が明確化されました

タイ国政府は2020年11月6日付で省令(Ministerial Regulation)No. 369を公表しました。

同国における移転価格税制の歴史はそれなりにあるものの、日米欧などの先進国に比べると、規定の整備は発展途上段階の部分もあるなか、今回の追加規定の導入で同国税務当局の考え方がより明確になったと言えます。新規定の具体的なポイントとしては以下のような点が挙げられます。

  • 関連者が広く定義された
  • 通常の商取引(棚卸資産取引等)のほか、金融取引も移転価格税制の対象となることが明確化された
  • 調査対象となる取引の明確化(≒独立企業原則の考え方が適用される旨の明確化)
    • 非関連者との取引と異なる条件で取引されている関連者間取引 
  • 課税方針の明確化
    • 関連者間取引と同様の非関連者との取引における価格を課税の基準として優先的に参照する
    • 上記取引がない場合には、国外の非関連者間取引を比較対象取引を課税の基準として参照できる

(2020年12月3日)

HOYA、課税の一部取り消しで4億円の還付

無形資産の考え方をめぐる、長い、長い闘いへ・・・歴史的な争訟事案に。

HOYA株式会社は、2012年3月期から 2014年3月期までの3事業年度の法人所得税について、約52億円相当の更正処分を受けていましたが、2020年11月11日付けの不服審判の裁決にて約4億円の還付が認められることとなった旨が、同社のIR情報で明らかになりました。

同社は2007年3月期から 2011年3月期までの5事業年度について、2013年6月に移転価格税制に基づく法人税等の更正処分を受け、約85億円の追加納付をしていましたが、この課税についても不服審判を経て約5億円の還付を受けているとみられます(同社2018年3月29日付IR情報参照)。

報道などをみると、いずれの課税も、日本法人とエレクトロニクス関連製品の開発・製造を行う海外関係会社との間で行われていた取引に関する「無形資産」の帰属をめぐる課税(所得の源になる無形資産が日本側に帰属するか、海外子会社側に帰属するか)であることがわかります。

詳細は明らかになっていないものの、最初の課税に関する不服審判の裁決について、同社は「すべての処分の取り消し」を求める姿勢を示していることから、おそらく最初の課税を受けた後も移転価格の設定方針を変えることなく事業を継続し、後続年度についても同様の課税が発生した可能性が高いように思います。ちなみに、同社は今般の裁決についても、「すべての処分の取り消し」を求めていく姿勢を示していることから、後続年度についても同様の課税が生じる可能性は十分にあると考えています。

いずれにせよ、少なくとも2014年3月期までの課税については法廷に持ち込まれることが見込まれますので、HOYA社との税務当局との争いはさらに長期化することになります。決着がいつになるかはわかりませんが、本件は今般の移転価格税制の実務において重要性が高まる一方の「無形資産」の考え方を形作る、極めて重要な争訟事案となることは間違いなさそうです。

令和元年税制改正で無形資産の定義は一歩明確化されましたが、「解釈」の余地はどこまでも残り、したがって納税者と税務当局の間で見解の相違も生じ得ます。一方、HOYA社のように税務当局との長期的な議論に堪える体力がある企業ばかりではありませんので、まずは見解の相違が生じないように、ローカルファイル等によりきちんと納税者の立場を説明できるようにしておくことはもちろん、潜在的な課税リスクを事前に認識し、課税に至った場合にどのような対応を採るかについては速やかに判断できるようにしておくことが望ましいように思われます。

(2020年11月17日)

メンバープロフィール

移転価格専門家

GMT移転価格税理士事務所 代表パートナー

田島 宏一

移転価格専門家/税理士

新日本アーンストアンドヤング税理士法人(EY税理士法人) 移転価格部門において、事前確認申請、移転価格税務調査対応等を数多く経験。その後、税理士法人トーマツ 移転価格部門において移転価格文書化、税務調査対応、移転価格ポリシー構築、実効税率低減のための組織再編、買収に係る移転価格リスクデューデリジェンス等さまざまな移転価格プロジェクトにおいて部門管理職としてプロジェクトを統括。これまで十数年にわたり移転価格を中心とした業務を行ってきた。現在では連結売上数十億円から数百億円の中堅企業の移転価格文書化及び移転価格ポリシー構築支援などのグループ間取引価格設定の整備に注力し、経済産業省への政策アドバイス、中堅監査法人・中堅税理士法人の移転価格機能サポート、新聞・専門誌での移転価格課税動向の解説なども行っている。


移転価格専門家

GMT転価格税理士事務所 パートナー

西村 憲人

移転価格専門家/税理士、CMA、CFP

デロイト トーマツ税理士法人において10年超の移転価格コンサルティング経験を有する。移転価格文書化等のコンプライアンス業務のほか、事前確認申請、税務調査対応、実効税率戦略の策定・実行支援といった戦略事案や、M&A検討時の移転価格リスクデューデリジェンス等、幅広い事案に従事。機動的・効率的な課題解決が求められる日々の問題解決事案から、関係各国のエコノミストや弁護士等との連携が必要とされる高難度事案の対応まで、実行責任者として関与してきた。

現在は経営コンサルタントとしてのキャリアも活かしながら、多国籍企業における経営課題の一領域として、国内外のクライアントの移転価格に関する諸問題の解決をサポートしている。


移転価格税務調査官

顧問

水野 寛

元東京国税局調査第一部 国際情報一課(移転価格調査課) 課長/税理士

東京国税局にて移転価格調査担当を中心に国際情報専門官、総括主査、課長補佐、統括国税調査官、国際情報化課長(移転価格調査担当課長)を務めた後、品川税務署長を歴任。現在は、移転価格税制に関する課税当局側の考え方、調査方針を踏まえたアドバイスを行っている。


望月移転価格税理士

顧問

望月 文夫

明治大学大学院経営学研究科

経営学博士 元国際税務専門官/税理士 埼玉学園大学大学院教授

元国際税務専門官/現大学教授として移転価格税制及び国際税務関して幅広い知識を持つ。著書には『図解 国際税務(平成25年版)』『日米移転価格税制の制度と適用』(大蔵財務協会)、『詳解国際税務』(共著、清文社)などがある。 明治大学会計専門職研究科兼任講師、青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科客員教授、上武大学大学院教授を歴任し、2010年より埼玉学園大学大学院教授兼経営学部教授に就任し現在に至る。第29回日税研究賞受賞、第17回租税資料館賞受賞。


海外進出コンサルティング

ビジネスパートナー

辻 佳子

クロスロード・キャピタル株式会社代表取締役社長/

一般社団法人新興事業創出機構(JEBDA)理事

アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティングにて、日系企業の中国+アジア新興国の進出/撤退支援業務に従事。アジアビジネスの事業構想策定、アジアマーケットの環境分析、マーケティング/プロモーション戦略などのプロジェクトを手掛ける。タイを拠点に隣接国・周辺国で活躍し、中国、タイ、ラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、インドネシア、バングラデシュの案件実績を持つ。その後、自らアジアビジネス支援会社を立ち上げ、大手企業の海外事業戦略アドバイザー等のほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構の海外販路開拓シニア・アドバイザーとしての活動を経て現在に至る。


出版物

移転価格税務調査対応マニュアル

ケーススタディ・判例で理解する海外寄附金と移転価格税制の実務

  • 著者:田島 宏一
  • 出版社: 税務研究会
  • 発売日: 2015年7月6日
移転価格税務調査対応マニュアル

移転価格文書化と国別報告書をめぐる最新動向

  • 著者:田島 宏一
  • 出版社: 中央経済社(旬刊 経理情報No.1410)
  • 発売日: 2015年4月10日
移転価格税務調査対応マニュアル

移転価格税制税務調査対応マニュアル

  • 著者:田島 宏一
  • 出版社: 中央経済社
  • 単行本:200ページ
  • 発売日: 2014年8月27日
図解 国際税務

図解 国際税務〈平成20年版~平成26年版〉

著者:望月 文夫

出版社:大蔵財務協会

単行本: 596ページ

ベリー比

ロケーションセイビング・マーケットプレミアム・グループシナジーに係る利益の帰属に関する最近の議論(田島宏一著)

著者:田島 宏一

出版社:税務研究会

媒体:月刊 国際税務 2013年12月号

発行:2013年12月5日

ダウンロード
ロケーションセイビング マーケットプレミアム グループシナジーについて.pdf
PDFファイル 476.2 KB

執筆者の主な著書・執筆歴

移転価格税制と税務マネジメント

著者:共著

清文社

発行:2011年3月22日

ISBN:978-4-433-51240-8

国際税務

海外子会社への役務提供に係る対価の回収

著者:田島 宏一

出版社:税務研究会

媒体:月刊 国際税務 2013年8月号

発行:2013年8月5日

日米移転価格税制の制度と適用―無形資産取引を中心に
  • 日米移転価格税制の制度と適用
  • ―無形資産取引を中心に(望月文夫著)
  • 著者:望月 文夫
  • 単行本: 675ページ
  • 出版社: 大蔵財務協会 (2007/5/15)
  • 発売日: 2007/5/15

移転価格検証における『ベリー比』の意義と実務上の論点

著者:田島 宏一

出版社:税務研究会

媒体:月刊 国際税務 2013年5月号

発行:2013年5月5日

ダウンロード
移転価格検証における『ベリー比』の意義と実務上の論点.pdf
PDFファイル 464.7 KB
移転価格 新聞記事

『中小企業の移転価格課税急増』

‐海外子会社との取引に注意‐

媒体:中日新聞

発行:2013年4月19日 

Q&A移転価格税制
  • Q&A移転価格税制―制度・事前確認・相互協議
  • 著者:望月文夫
  • 単行本: 750ページ
  • 出版社: 税務経理協会 (2007/10)
  • 発売日: 2007/10

税務署による海外取引法人への調査・課税の動向 税務署所管法人の約7割が海外取引において課税を受けている実態について

著者:田島 宏一

出版社:税務研究会

媒体:月刊 国際税務 2013年3月号

発行:2013年3月5日

ダウンロード
税務署所管法人への調査・課税の動向.pdf
PDFファイル 283.8 KB
国際税務

中堅企業にとっての移転価格税制と寄附金課税

著者:田島 宏一

出版社:税務研究会

媒体:月刊 国際税務 2013年2月号

発行:2013年2月5日

ダウンロード
中堅企業にとっての移転価格税制と寄附金課税.pdf
PDFファイル 386.5 KB

【移転価格税制】アジア拠点設立に係る移転価格税制上の論点

著者:田島 宏一

財団法人大蔵財務協会

『国税速報』  平成23620日 第6170

平成23年度税制改正による独立企業間価格の算定方法の

適用順位見直しの影響

著者:田島 宏一

財団法人大蔵財務協会
『国税速報』 平成23328日 第6159

国際税務基本500語辞典

国際税務基本500語辞典

  • 著者:望月 文夫
  • 単行本: 306ページ
  • 出版社: 大蔵財務協会 (2010/12)
  • 発売日: 2010/12