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フランスの移転価格税制

フランスの移転価格税制

【近年の動向】 (2012年5月現在)

フランスでは、2011年度より、文書化規定が導入されている。

フランスの税務当局(FTA)は、特にフランスの外国子会社が仕入販売をする取引において赤字を計上している場合について、厳しい課税を行う傾向にある。

近年では、組織再編に係る無形資産取引、保証料などの金融取引、サービス業などへの調査が厳しくなっている。

【基本情報】

①税務当局

フランスでは、売上規模に応じて対応当局がかわる。

売上高 EUR152.4 million以上 (サービス業については売上高EUR76.2 million以上)の会社及びそのような会社の子会社等に対しては、

Direction des Vérifications Nationales et Internationales (DVNI)

(National and International Audit Department)

売上高EUR1.5 million~EUR152.4 million (サービス業の場合はEUR76.2 million)の会社及びそのような会社の子会社等に対しては、

Directions Interrégionales de Contrôle Fiscals (DIRCOFI)

(Interregional Tax Audits Department)

売上高EUR1.5 million以下の会社及び中小企業に対しては、

Directions des Services Fiscaux (DSF)
(Departmental Tax Services Department)

②移転価格税制の課税対象

株式の50%以上の保有関係のある会社

③移転価格課税の時効

原則3年であるが、悪質な租税回避等の場合5年

④移転価格に関する開示義務

無し

⑤文書化義務

国外の関連者と株式の50%以上の保有関係にあり、売上高EUR 400 million以上である会社。

⑥移転価格課税を受けた場合のペナルティー

租税回避とみなされた場合、一般的な課税に係るペナルティーとして、追徴税額の40%又は80%のペナルティーが課される。

課税年度1年に対し、最低EUR10,000又は更正所得総額の5%

*移転価格文書化を行っていれば、最低EUR10,000又は更正所得総額の5%のペナルティーは回避される。

⑦移転価格算定方法

基本三法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法)、

利益分割法、取引単位営業利益率法

基本的にフランス当局はOECDガイドラインに準拠した移転価格の執行を行。

実務上は取引単位営業利益率法(TNMM)が適用されるケースが極めて多い。

⑧比較対象会社の選定

フランス企業を選ぶことにこだわりは強くない。(フランス企業であれば尚可)

⑨関税当局と税務当局の関係

低い。(関係強化中)

⑩相互協議

フランスは120カ国と租税条約を結んでおり、相互協議の経験は比較的多く、二重課税を解消できる可能性は高い。

日本との相互協議の回数は多くなく、年に1回程度である。

⑪APA

ユニラテラルAPA、バイラテラルAPAともに可。

⑫使用言語

原則としてフランス語だが、状況に応じて英語が認められる場合もある。

スペインの移転価格税制

近年の傾向】 (2012年5月現在)

スペインでは、2006年12月以降、移転価格文書化が求められ、移転価格に関する立証責任が納税者へと転嫁されている。

また、近年では、移転価格に関して申告書上で開示が求められるようになっている。

【基本情報】

①税務当局

Spanish Tax Agency (Agencia Estatal de Administración Tributaria – AEAT)

②移転価格税制の課税の対象

25以上の株式を保有関係にある国外関連者との取引。

その他、実質的な支配関係にあるグループ間取引。

③移転価格課税の時効

原則として4年。

④移転価格に関する開示義務

2009年2月以降においては、申告書上、以下の情報を開示しなければならない。

・国外関連者の名称

・国外関連者との資本関係

・国外関連者間取引の金額

・移転価格算定方法

*開示を怠った場合、罰金が課される。

⑤移転価格算定方法

独立価格比準法(CUP法)、再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法)、

利益分割法(比較利益分割法、寄与度利益分割法、残余利益分割法)

取引単位営業利益率法

ベストメソッドルールの適用は無く、基本三法(CUP法、RP法、CP法)が優先適用される。

利益法はラストリゾート(基本三法が適用できない場合に使用)とされている。

⑥移転価格課税に係るペナルティー

2009年2月まで特段のペナルティーは無く、2009年2月以降、移転価格課税について50%~150%のペナルティーを課すことができるようになった。

ただし、文書化がされていれば、2009年2月以降についてもペナルティーを課されることはほとんど無い。

⑦比較対象会社の選定

スペインの税務当局は、過去においてはスペイン企業を比較対象とすることを求めていたが、近年では、特に新しい産業についてはヨーロッパを対象として選定することが認められる。

データベースとしては、Amadeus(欧州用)が使用される傾向にある。

⑧関税当局との関係

税務当局と関税当局との関係は希薄であるが、近年では関係強化を目指している。

⑨相互協議及びAPA

スペインの税務当局は相互協議の経験はあり、概ね合意に至っている。

また、APAについてはバイラテラル(二国間)APA、マルチラテラル(多国間)APA、ユニラテラルAPA共に可能。

⑨使用言語

スペイン語

ブラジルの移転価格税制

ブラジル

【近年の動向】

ブラジルは、世界でも珍しく、移転価格税制についてOECD加盟諸国とは違った制度を有している。ブラジルの制度では、低税率国又は特区との取引について課税対象となる。

またブラジルでは、移転価格について比較的柔軟な対応がとられており、期中での移転価格算定方法の変更が認められている。

2013年からは、新ルールが適用されることとなっている。

【2016年度改正】

2016年12月29日、税務当局は年次国別報告要件に関する最終規則案を公表。本規則には、マスターファイル及びローカルファイルの要件は含まれていない。

  • 条件:年度の連結売上高が22.6億BRLを超えている多国籍企業。当該条件は在ブラジル子会社にも適用される。
  • 対象初年度:2016年度
  • 期限:税務申告と併せて提出。(年度終了から8か月以内)
  • 使用言語:ポルトガル語、スペイン語、英語。提出フォーマットは、OECD指定のXML Schema。
  • 罰則:2種類のペナルティーが適用する、①期限内に報告書が提出されていない又は税務当局の要請に応じていない場合は、毎月500~1,500BRLのペナルティーが科せられ、②誤った情報を提供した場合は、取引額の3%に値するペナルティーが科せられる。

【基本情報】

①税務当局

Secretaria da Receita Federal

②移転価格税制の課税対象

同一の支配下にある企業群で、いずれか一つが低税率国又は特区に所在する場合。

③移転価格課税に係る更正期限

原則5年。

④移転価格に関する開示義務

関連者間取引の内容をまとめたものと、移転価格の算定結果を税務申告書に添付しなければならない。

⑤移転価格算定方法

独立価格比準法(CUP法)

再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法) *粗利率は業種ごとに固定率を適用。

また、輸出取引については、セーフハーバールールが適用可。

⑥移転価格課税に係るペナルティー

移転価格課税に係る特別なペナルティーは無く、一般的な法人課税の場合のペナルティーが適用される。

⑦ブラジルの特徴

他のOECD加盟国のように「独立企業原則」に準拠してはおらず、移転価格算定方法においても、固定のマージン率が用いられている。

⑧2013年からの移転価格税制改正

主な改正のポイントとしては、再販売価格基準法(RP法)の適用について、産業ごとにマージン率が定められることとなり、産業によって20%~40%の粗利益率が適用される。

また、天然資源に係る輸出入取引については、世界での先物取比価格を基準とした価格比準法により検証が行われることとなる。

また、ブラジル中央銀行を介さないローン取引に係る金利は移転価格税制の対象となり、ドル預金に係る6か月のLIBORを超える金利分は法人税の計算において控除できない。

⑨相互協議及びAPA

租税条約のネットワークは広範ではあるものの、移転価格に関する相互協議の経験は乏しく、移転価格課税に係る二重課税を解消することは困難である。

また、APAは認められていない。

⑩使用言語

ポルトガル語

インドの移転価格税制

【近年の動向】

インドの移転価格税制は、2001年の導入以降、OECDガイドラインに準拠した形で運営がなされてきた。近年では税務当局の経験値も積み上がってきている。また、APAも導入されることとなり、2014年には大手商社の第一号日印APAの実例も報道されるところとなっている。

特にIT、製薬、金融、自動車、化学関連の企業への調査が多くなっている。過去の傾向を考慮すると、損失を計上している会社、利益率の低い会社、支払ロイヤリティ料率が高い場合、費用の付け替え、マネジメントフィー、金融取引、組織再編などについては特に注意が必要であると考えられる。 また、移転価格調査に関しては 、調査対象を取引高よりもリスク多寡を基準として選定する考えも示している。

なお、従来認めていなかった複数年データの使用及びレンジの概念についても、国際的なプラクティスとの平仄を考慮のうえ、導入する予定となっている。

G20におけるコミットメントを念頭に、今後さらにBEPS問題への対応を踏まえた制度の整備も進められることが予想される。

【基本情報】

①税務当局

Ministry of Finance, Central Board of Direct Taxes (CBDT)

②移転価格税制の課税の対象

直接又は間接的な支配関係(同一の者に支配を受けている関係を含む)にある企業間の取引。また、以下の観点から「関連性がある」とみなされれば、移転価格課税の対象となり得る。

◆26%以上の株式の所有

◆取締役会の支配

◆原料又は製品の取引における影響力

◆無形資産の相互依存

◆借入又は保証の依存

なお、特定取引の額が5,000万インドルピー(INR)を超える時は国内取引についても移転価格税制の対象となり得る。

③文書化義務(マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書)

I.国別報告書

  • 条件:年度の連結総収入金額が750 million EURを超えている多国籍企業。当該条件は外国親会社の在インド子会社にも適用する。
  • 対象初年度:2016年4月1日以降に開始する会計年度。
  • 期限:会計年度終了から8か月以内に申告書と併せて提出。
  • 使用言語:言語、提出フォーマットは未定。
  • 代理提出:国別報告書の親会社代理提出は認めれている。海外に最終的親会社を持つ在インド子会社は、国別報告書を提出する親会社又は代理提出する子会社・恒久的施設(PE)の法人名、所在地を税務機関に通知する義務がある。
  • 罰則:500,000 INR以下のペナルティー。

II.マスターファイル、ローカルファイル

  • マスターファイル、ローカルファイルのガイダンスは、法令に導入される予定。
  • 対象初年度、ペナルティーは国別報告書と同じ。

現行文書化ガイダンス

国際的な取引高が1,000INRを超える場合、かつ/又は5,000INRを超える国内取引がある場合には、移転価格文書を所得税の申告期限までに準備しなければならない。

また、当局から提出要請が合った場合には30日以内(申出により30日の延長が一度認められる)に提出しなければならない。

④移転価格に関する開示義務、

Form No. 3CEB」において、関連者や国外関連取引の内容、移転価格分析等を記載し、提出しなければならない。なお、レポートには公認会計士の署名が必要となる。

開示義務を怠った場合、取引金額の2%がペナルティーとして課されることとなる。

⑤移転価格算定方法

独立価格比準法(CUP法)、原価基準法(CP法)、再販売価格基準法(RP法)、取引単位営業利益法(TNMM)、利益分割法及びその他の方法も適用可能である。なお、CBDTはその他の方法は無形資産取引等のユニークな取引に適用され得る旨を示唆している。

算定方法について優先順位は無い。

⑥移転価格課税の時効

48ヶ月(4年)

⑦罰則等

所定の情報や移転価格文書を準備・提出しない場合(誤った情報を提供する場合を含む):取引金額の2

課税を受けた場合:追徴税額の100%~300%。

⑧相互協議・APA

相互協議:多数の国と租税条約を締結しており、ネットワークは広いが、移転価格に係る相互協議の経験は少なく、米国、日本その他の少数の国との合意実績があるのみである。

APA:ユニラテラルAPA、二国間APA、多国間APAが可。ユニラテラルAPA実績を増やし、2014年末にはインドで初となる本邦大手商社との二国間APAの実績もある。匿名の事前相談が可能。

⑨使用言語

英語

イタリアの移転価格税制

イタリアの移転価格税制

【基本情報】 (2012年5月現在)

①税務当局

Ministero dell’Economia e delle Finanze

(Italian Ministry of Economy and Finance)

②移転価格税制の課税対象

50%以上の株式/議決権の保有関係にある国外関連者との取引。

③移転価格課税の時効

4年間

④文書化の義務

無し。

⑤比較対象会社の選定

原則としてはイタリアの比較対象が好まれるが、無い場合にはヨーロッパの比較対象も可。

データベースは、イタリアローカルのAida及びAmadeusが使用されている。

⑥移転価格算定方法

OECDガイドラインに準拠。

⑦移転価格課税が行われた場合のペナルティー

移転価格課税にあたっては、通常の法人課税に係るペナルティーが適用され、追徴税額の100%~200%の加算税が課される。

⑩関税当局と税務当局との連携

関税当局と税務当局との連携のレベルは比較的低い。

⑪相互協議及びAPA

イタリア当局は相互協議の経験が少なく、二重課税の解消及び二国間APAの合意には困難が予想される。

⑫使用言語

イタリア語

チリの移転価格税制

チリ

【近年の動向】 (2013年5月現在)

2012年9月27日から、OECDガイドラインに合わせた形で、チリにおける移転価格に関するガイドラインが改定され、税務調査においては、より詳細なグループ間取引に係る損益状況や移転価格に関する説明が求められるようになってきている。

 新しいガイドラインにおいては、 移転価格算定方法について明記されただけでなく、組織再編に関するルールも設けられている。さらに、文書化資料の準備も求められるようになり、グループ間取引の価格設定が独立企業原則に準拠していることを立証する必要となった。

2012年では、鉱業関係、消費財、商社等が調査の対象となったが、2013年ではグループ間役務提供取引が重点的に調査されると言われている。

【基本情報】

①税務当局

Servicio de Impuestos Internos (SII)

②移転価格税制の課税対象

直接又は間接的な支配関係又は所有関係のある企業。例えば、独占契約を結んでいたり、経済的又は財務的に依存した関係にある場合などが考えられる。また、タックスヘイブン税制適用対象国に所在する関連者との取引は、移転価格税制の対象となると考えられる。

③移転価格課税の時効

現状、チリには明文化された移転価格ガイドラインは無いため、一般的な法人税の時効である3年が適用されると考えられる。但し、悪質な租税回避行為とみなされた場合、6年間の時効が適用される可能性がある。

④移転価格に関する開示義務

Article 41 E に基づき、グループ間取引に係る移転価格に関して開示が求められている。

2013年1月31日に国税庁から情報開示に関する指針が出され、移転価格の算定方法、取引通貨、関連者の住所や従業員数等の情報、グループの活動内容、グループ間取引の内容、組織再編に関する説明などの開示が求められている。

⑤移転価格算定方法

独立価格比準法、原価基準法、再販売価格基準法

利益法(取引単位営業利益率法、利益分割法)

⑥移転価格課税に係るペナルティー

35%のペナルティー税率が適用され、インフレレ分の調整、延滞税、5%の加算税が課される可能性がある。

⑦相互協議及びAPA

チリは24カ国と租税条約を結んでいる(この他に4ヶ国と近い将来締結予定)が、移転価格に関する相互協議の経験はほとんどない。

現在APAの実施については、議論が進められており、近い将来手続きの詳細が公表される予定である。

⑧使用言語

スペイン語

カナダの移転価格税制

基本情報

カナダ

①税務当局

Canada Revenue Agency (CRA)

②移転価格税制の課税対象

50%以上の株式の保有関係のある国外関連者との取引。

但し、実質的に支配関係にあるとみなされた場合は、課税対象となり得る。

③移転価格課税の時効

7年(場合によっては6年のケースもある)

④移転価格に関する開示義務

国外取引の総額が100万カナダドルを超える場合には、税務申告時に「e T106」の様式により、取引金額や移転価格算定方法等の情報を開示しなければならない。e T106の提出を怠った場合、ペナルティーが課せられる可能性がある。

⑤移転価格算定方法

CUP法及びその他の伝統的な取引基準法が適用できる場合には、最も信頼性の高い算定方法であると考えられているが、OECDガイドラインに従って、最も適切な算定方法を選択することとされている。

実務上はTNMMが使用されるケースが多い。

⑥移転価格課税が行われた場合のペナルティー

更正金額の10%がペナルティーとして課される可能性がある。

但し、納税者が文書化資料の準備などにより移転価格の決定にあたって適切な努力をしていることが認められれば、ペナルティーを回避できる可能性がある。

⑦比較対象会社の選定

原則としてはカナダの企業を求められるが、選定できない場合には北米地域に対象を広げることも認められる。

カナダ当局は、データベースとしてStandard and PoorのCapital IQを使用しているようである。

⑧カナダ当局による移転価格課税執行の特徴

移転価格の検証にあたって、複数年度の平均による検証は認められず、各年度で検証されることとなる。

また、四分位レンジの使用は認められないケースが多い。

カナダ当局は、金融取引(金利・保証料等)について課税を行うケースが多いのが特徴的である。

⑨相互協議及びAPA

カナダ当局は相互協議の経験も多く、ほとんどのケースで合意に至っている。

また、ユニラテラルAPA、バイラテラルAPA、マルチラテラルAPAともに申請可能。

⑩使用言語

英語及びフランス語

【2016年度改正】

2016年12月15日、CRAは年次国別報告要件に関する最終規則案を公表。尚、最終規則案はOECDのガイダンスに沿っている。本規則には、マスターファイル及びローカルファイルの要件は含まれていない。

  • 年度の連結売上高が7.5億ユーロを超えている多国籍企業。当該条件はカナダで活動している子会社にも適用される。
  • 対象初年度:2016年度
  • 期限:会計年度終了から12か月以内に提出。
  • 代理提出:報告書の親会社代理提出を承認。
  • 罰則:報告義務に違反し、且つCRAから報告書の要請がなかった場合は、毎月500カナダドル(最大24か月)のペナルティーが発生する。報告義務に違反し、且つCRAから報告書を要請された場合は、毎月1,000カナダドルのペナルティーが適用される。

韓国の移転価格税制

韓国の移転価格税制

【近年の動向】 (2019年5月26日更新)

韓国では、2010年に移転価格税制の改正がなされ、よりOECDガイドラインに準拠した内容となった。また、当初税務当局と関税当局との連携は無かったが、20127月から、関税上の調整を所得税に反映させるなどの処理が制度上できるようになっている。

2014年に大幅な改正は無いが、20151月より移転価格算定方法の申告義務等に関する閾値が引き上げられるなど、事務・手続に関する数件の改正規定が施行された。

【基本情報】

①税務当局

National Tax Service (NTS)

②移転価格税制の課税の対象

50%以上の株式の直接・間接の保有関係、実質支配関係や共通利害がある国外関連者との取引。

③移転価格課税の時効

原則として5年間。 (繰越損失がある場合には例外規定あり)

④文書化義務(マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書)

I.マスターファイル

  • 下記のいずれかの条件に合致する企業はマスターファイルを作成する義務がある。①内国法人又は韓国に恒久的施設(PE)を有している外国法人、②年度の収入金額が1,000億ウォン及び関連者間取引額が500億ウォンを超えている場合。
  • 対象初年度:2016年
  • 期限:会計年度終了から12か月以内に税務機関に提出。
  • 使用言語:韓国語、英語。英語での提出も認められているが、提出1か月以内に韓国語へ翻訳した文書を提出。
  • 罰則:提出されなかった場合は3,000万ウォンのペナルティーが課される。税務機関が追加情報の提供を求めた場合は60日以内に提出。

II.ローカルファイル

  • 対象初年度、期限、罰則等はマスターファイルと同じ。
  • 使用言語:韓国語
  • 提出:税務当局からの要求後60日以内に提出しなければならない
  • 罰則:提出されなかった場合は3,000万ウォンのペナルティーが課される。

III.国別報告書

  • 条件:年度の連結総収入金額が1兆ウォンを超えている韓国に所在する最終親会社。また、韓国に所在する外資系子会社で、最終親会社所在国から国別報告書を入手できない場合。
  • 対象年度:2016年
  • 期限:会計年度終了から12か月以内に税務機関に提出。
  • 使用言語:現時点では指定されていない。提出フォーマットに関しては、XML Schemaは採用されていない。
  • 代理提出:国別報告書の親会社代理提出を認めている。
  • 通知:会計年度終了から6か月以内に通知。尚、国別報告書の通知条件は、韓国法人の会計年度に適用される。
  • 罰則:提出されなかった場合は3,000万ウォンのペナルティーが課される。

⑤移転価格に関するその他開示義務

移転価格算定方法、国外関連取引及び国外関連者の損益の概観について、申告しなければならない。但し、移転価格算定方法と国外関連者の損益の概観については一定の要件を満たす場合申告を要しない。

⑥移転価格算定方法

独立価格比準法(CUP法)、原価基準法(CP法)、再販売価格基準法(RP法)、取引単位営業利益法(TNMM)、利益分割法、その他の合理的な方法が認められる。
算定方法間の優先順位は無く、最適法が適用される。

⑦移転価格課税の時効

原則として5年間。

無申告納税者の場合は7年間、不正がある場合は10年。

ただし、20151月以降に開始する課税年度については国際取引につき不正がある場合の時効期間は15年間に延長される。

⑧罰則等

NTSからの要求から60日以内(状況により60日の延長可)に資料を提出しない場合:最大1億ウォン。正当な事由なく期限内に提出しない場合には、さらに不服申立や相互協議で該当の資料が無視される可能性もある。

課税された場合:追徴税額の10%のペナルティー(不正の場合は40%)。また、20151月以降は国際取引につき不正がある場合のペナルティーが60%に引き上げられる。

また、大統領施行例に定める料率による延滞税(1日あたり0.03%、年間10.95%等)が課される。

但し、以下の場合10%のペナルティーは免除される可能性がある。

◆証拠資料が提示され権限ある当局がそれを認めた場合

◆NTAがユニラテラルAPAを認めた場合

◆同時文書が準備・保管されており、提出要請から30日以内に提出した場合

⑨相互協議・事前確認申請(APA)

相互協議:経験はあり、概ね二重課税を解消することは可能である。

APA:ユニラテラルAPA、二国間(及び多国間)APAの申請が可能である。また2015年以降はユニラテラルAPAと課税価格事前審査制度(Advance Customs Valuation Arrangements)の同時申請が可能となる。

使用言語

マスターファイル、ローカルファイルともに韓国語で作成しなくてはならない。英語のマスターファイルも提出できるが、その後1か月以内に、韓国語訳を作成・提出しなければならない。