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海外寄附金課税制度と移転価格税制②(寄附金規定の歴史と移転価格)

海外寄附金に係る検討の歴史と移転価格税制との関係性

寄附金規定では、課税金額の算定にあたり、贈与資産等の時価又は譲渡資産等の譲渡対価と時価との差額を損金不算入とすることは定められているものの、その時価自体の算定方法について明確な規定はありません。

もともと寄附金の損金不算入制度は昭和17年から始まり、昭和40年の法人税全文改正で現行の制度となっていますが、当時は“国内”関連者との取引において、費用の負担・費用の付け替えを通じた租税回避を防ぐことが目的であったといわれています。

そのため、基本的にはその費用負担の支出額や贈与資産の購入金額、簿価等を基準に課税金額を算定することが想定されており、譲渡資産の「時価」自体を算定することは厳密に求められていなかったのかもしれません。

たしかに、国内取引であれば取引価格のズレが生じていたとしても、その事実がきちんと申告されてさえいれば、仮に各法人が負担する税額それぞれにゆがみがあったとしても、基本的に取引当事者の合計では、所得の総額に対応する税額を課すことができます。そのため、悪質な費用の付け替えによる租税回避を防ぐことができれば、課税の公平性は概ね担保できるといえます。

一方、取引相手が海外にある場合、取引価格のズレにより海外法人へ所得が移転してしまうと、日本国では税を課すことができません。

そのため、海外寄附金については、単純な費用の付け替えの予防だけでは不十分であり、国家の税収確保に当たっては、棚卸資産や無形資産(ロイヤルティ)取引などについて、リーズナブルな取引価格の設定を求めていく必要があります。これは取引相手国にとっても同様です。

このように、国をまたぐ取引については、その取引価格の算定方法によって税収が大きく左右されることとなるため、移転価格税制では一般的に一定の国際的なコンセンサスのもと、「独立企業原則」に基づいて算定すべきことを定められています。なお、日本では最もグローバルなコンセンサスであると言えるOECD(ないしG20など)におけるコンセンサスに基づいて、移転価格税制が設計されています。

移転価格税制の課税対象と注意点①(要旨)

移転価格税制の課税対象

移転価格税制の適用対象となる取引の相手方となる国外関連者の要件は、発行済株式の50%以上を直接又は間接に保有し又は保有されているか、実質的な支配関係にあることです。従って、日本の観点からすると、原則としては50%以上の株式を保有する海外子会社が対象となります(その他実質支配基準等の要件もあります)。一方で、中国のように、25%以上の資本関係を課税対象としている国もあります。例えば中国に25%を所有する関連会社がある場合、日本では課税対象とならなくても当該関連会社の現地国において課税対象となる点に留意が必要です。

なお、日本の移転価格税制の規定上、資本関係による基準の他に、下記のように実質支配基準も設けられていますので、注意が必要です。

参考:租税特別措置法施行令

第三十九条の十二  法第六十六条の四第一項 に規定する政令で定める特殊の関係は、次に掲げる関係とする。

・・・

三  次に掲げる事実その他これに類する事実(次号及び第五号において「特定事実」という。)が存在することにより二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(前二号に掲げる関係に該当するものを除く。)

イ 当該他方の法人の役員の二分の一以上又は代表する権限を有する役員が、当該一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は当該一方の法人の役員若しくは使用人であつた者であること。

ロ 当該他方の法人がその事業活動の相当部分を当該一方の法人との取引に依存して行つていること。

ハ 当該他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を当該一方の法人からの借入れにより、又は当該一方の法人の保証を受けて調達していること。

このように、資本関係が規定の持分以下で適用対象と思われるような状況でも、実質支配関係にあるとみなされた場合や、現地国での課税対象となっている場合、移転価格課税を受けるリスクがある点には注意が必要です。

移転価格税制の課税対象と注意点②(詳解)

移転価格税制の課税対象

移転価格税制は、法人税法の中の租税特別措置法66条の4を基礎として定められており、当該規定は以下の通りです(2022/8/15現在)。

(国外関連者との取引に係る課税の特例)

法人に係る国外関連者(外国法人で、当該法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(当該他方の法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める特殊の関係(次項、第五項及び第十項において「特殊の関係」という。)のあるものをいう。以下この条において同じ。)との間で資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引を行つた場合に、当該取引(当該国外関連者が恒久的施設を有する外国法人である場合には、当該国外関連者の法人税法第百四十一条第一号イに掲げる国内源泉所得に係る取引として政令で定めるものを除く。以下この条において「国外関連取引」という。)につき、当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は当該法人が当該国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、当該法人の当該事業年度の所得に係る同法その他法人税に関する法令の規定の適用については、当該国外関連取引は、独立企業間価格で行われたものとみなす

次にこの規定につき、下線を引いた①~③のポイントについて解説します。

50%以上の持ち分関係を有する者との取引

まず、移転価格税制は、自由に設定ができるグループ間取引価格の操作やゆがみを通じて海外に所得が移転されることを防ぐことを目的とした税制であるため、取引価格を自由に設定できる状況かどうかが課税判断の入り口となります。

この点について、日本では、50%以上の出資割合を有する企業を対象としており、また、この保有方法については「直接又は間接に保有する関係」としていることから、兄弟会社や孫会社との取引も移転価格課税の対象となります。

また、出資比率による判断基準の他、実質的な支配基準も設けられています。例えば49%以下の出資割合であったとしても、海外子会社の役員の過半数が本社からの出向者である場合や、海外子会社が技術や事業面で完全な依存関係にあるような場合も、実質的に取引価格を操作可能であることから移転価格税制の課税対象となります。

なお、日本の規定では50%以上の出資関係を基準としていますが、たとえば、中国やインドネシアでは25%以上の出資関係があれば課税対象とされています(2022/8/15現在)。また国によっては、出資比率の基準を設けておらず、実質的な支配基準を元に課税対象を判断する国もあります。

例えば、25%の出資比率の中国やインドネシアの合弁会社との取引については、日本側では実質支配基準を充足しなければ移転価格課税の対象となりませんが、現地側では移転価格課税の対象となる場合があるため注意が必要です。このような場合、中国やインドネシアなどの現地側の利益配分が不十分とみなされると、現地国側で課税を受ける可能性があります。       

②資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引

上記のように、支配関係のある者との取引について、まず、資産の販売=輸出取引、資産の購入=輸入取引は課税対象となります。ここで言う資産には、全ての資産が含まれますので、製品取引はもちろん、部品や半製品取引、設備の販売なども対象となります。

また、近年ますます注目を集める無形資産を譲渡するような場合も、その譲渡対価によって両国の利益配分は変わってきますので、課税対象となります。このように、関連者間での全ての資産の売買取引は課税対象となります。 また、グループ内での役務の提供として、出張や出向による支援や、本社から子会社に対する経理の代行や人事の代行などの管理サービスの提供についても、その対価の妥当性に関して移転価格課税の対象となります。

対価を全く回収していない場合には当然課税対象となりますが、対価を回収していても算定根拠が不明な場合や、対価が高すぎる場合などは海外子会社側の税務調査で損金否認を受けるケースもありますので注意が必要です。なお、役務提供に該当するかどうかについては、慎重な判断が求められる場合もあります(低付加価値グループ内役務提供の解説を参照)

最後に、「その他の取引」ですが、融資に係る金利や債務保証に伴う保証料、無形資産の供与に係るロイヤルティや設備の賃貸など、国外関連者との取引があれば、その価格設定が両国における所得に歪みを生じさせるおそれがあることから、基本的に全ての取引が課税対象となる点にご留意ください。

③独立企業間価格となっていない場合

移転価格課税は、グループ間取引による取引価格の操作や価格設定のズレによる海外への利益移転について追徴課税を行う税制ですが、そもそもの「適正な価格」の基準となるのが「独立企業間価格」です。海外子会社への販売価格が独立企業間価格に満たなければ、その分、売上・収益の計上漏れとなり、逆に仕入・支払の金額が独立企業間価格より高すぎれば、その分費用の過大計上として追徴課税がなされます。

移転価格税制の全ての判断基準は、この「独立企業間価格」にあり、グループ間での取引価格を、独立企業間であれば成立した価格で設定しなければなりません。海外ではArm’s Length Price(近すぎず腕の長さほどの距離間のある関係での価格=独立企業間価格)と言い、世界的に共通の基準となっています。

移転価格税制は、国境を越えたグループ間での所得配分を司る税制であり、取引相手国との関係もあることから、国内法のように、明確な規定で計算方法を定めることが困難です。ここで、取引価格を独立企業間で成立する価格とすれば、両国にとって公平な利益配分となることから、この「独立企業間価格」というコンセプトをもとに、世界中の利益の配分すなわち移転価格税制は成り立っています。

移転価格税制において定められている移転価格算定方法は、全てこの独立企業間価格を算定するために設けられており、その算定結果と実際の取引価格との間に差があれば、その分を追徴課税することとなります。

この「独立企業間価格」が、容易かつ明確に算定できれば問題は起きないのですが、製品の内容によって取引価格はさまざまであることはもちろん、市場の状況や、売り手と買い手の活動内容によっても、独立企業間において取引価格は変動します。

そのため、グループ間取引に係る「独立企業間価格」の解釈には幅があり、算定を行う者によって答えが変わることもあり得ます。課税の取り漏れを防ぐ税務当局と余分な税金を納めたくない納税者、国境を挟んだ国同士の利益の取り合いなど、利害の異なる者の間では意見が食い違うケースも少なくなく、移転価格の問題は、さまざまな関係者との間で生じます。

場合によっては、グループ間でも、親会社と海外子会社とで利益の取り合いになるケースや、合弁会社との取引価格の問題、社内の営業担当者と経理担当者との意見の食い違いなど、税務当局への対応だけでなくグループ企業内・社内の問題への対処も必要なケースもあります。

文責:西村憲人

5分で分かる独立価格比準法

独立価格比準法とは?

独立価格比準法は、法令上以下のように定められています(2022/8/15時点。以下同様)。

【租税特別措置法六十六の四2項1号】

※棚卸資産の販売又は購入取引に関する算定方法

イ 独立価格比準法(特殊の関係にない売手と買手が、国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引の対価の額(当該同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引がある場合において、その差異により生ずる対価の額の差を調整できるときは、その調整を行つた後の対価の額を含む。)に相当する金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)

移転価格税制では、この独立価格比準法を最も直接的な算定方法として理論上優先的に適用すべき算定法と位置づけており、グループ間で取引される製品と同じものが第三者間で取引されていれば、その価格を独立企業間価格とすることを求めています。ただし、法令上適用すべき算定方法に優先順位はなく、いわゆるベストメソッドルールに基づき、実態に応じた最適な算定方法を適用することとされています。

比較可能性の検討ポイント

移転価格税制では、さらにこの第三者間での取引価格との比較の方法についても詳細に規定しており、租税特別措置法関係通達において、比較するポイントとして以下を列挙しています。

(比較対象取引の選定に当たって検討すべき諸要素等)

66の4(3)-3措置法第66条の4の規定の適用上、比較対象取引に該当するか否かにつき国外関連取引と非関連者間取引との類似性の程度を判断する場合には、例えば、法人、国外関連者及び非関連の事業の内容等並びに次に掲げる諸要素の類似性を勘案することに留意する。(平12年課法2-13「二」により追加、平14年課法2-1「五十八」、平22年課法2-7「三十」、平23年課法2-13「二」、平26年課法2-9「二」、令元年課法2-10「三十八」により改正)

(1) 棚卸資産の種類、役務の内容等

(2) 売手又は買手の果たす機能

(3) 契約条件

(4) 市場の状況

(5) 売手又は買手の事業戦略

(注)

1 (2)の売手又は買手の果たす機能の類似性については、売手又は買手の負担するリスク、売手又は買手の使用する無形資産(同条第7項第2号に規定する無形資産をいう。以下同じ。)のうち重要な価値のあるもの等も考慮して判断する。

2 (4)の市場の状況の類似性については、取引段階(小売り又は卸売り、一次問屋又は二次問屋等の別をいう。)、取引規模、取引時期、政府の政策(法令、行政処分、行政指導その他の行政上の行為による価格に対する規制、金利に対する規制、使用料等の支払に対する規制、補助金の交付、ダンピングを防止するための課税、外国為替の管理等の政策をいう。)の影響等も考慮して判断する。

3 (5)の売手又は買手の事業戦略の類似性については、売手又は買手の市場への参入時期等も考慮して判断する。

また、比較する製品等について、差異がある場合には、当該差異が価格に及ぼす影響を調整し、同条件での価格を算定することを求めています。 寄附金規定における時価の考えでは、そこまで詳細な規定は定められていませんが、第三者間で成立した価格という面で、この独立価格比準法で定める価額が最も近い概念であると考えられます。

文責:西村憲人

5分で分かる利益分割法

利益分割法とは?

利益分割法とは、一連の取引によってグループ連結で生じる利益を独立企業間での利益配分状況に合わせて配分し、そこから取引価格を逆算する方法です。

移転価格税制は、もともとグループ間での取引価格を独立企業間価格として算定することを出発点としていますが、結果的には国家間での所得配分につながるものであるため、特に近年においては利益配分を適正に行うことに重きが置かれているように思われます。利益分割法と以下の取引単位営業利益法は、個々の製品の取引価格を算定するというよりも、一つの商流において獲得される利益の配分を算定する正確が強く、寄附金規定における時価の概念から少し飛躍しているように思われます。利益分割法は、以下の3つの方法に分けられます。

・比較利益分割法

・寄与度(貢献度)利益分割法

・残余利益分割法

以下では、各利益分割法について解説いたします。

比較利益分割法とは?

比較利益分割法は、グループ間で行われる取引と類似の取引における独立企業間での利益配分割合に基づいて当該取引に係る連結での合算利益を配分し、その配分された利益に基づいて取引価格を算定する方法です。

根拠法令

比較利益分割法は、法令上、以下のように定められています(2022/8/15時点。以下同様)。

租税特別措置法施行令三十九条の十二の8項1号

イ当該国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産の非関連者による販売等(イにおいて「比較対象取引」という。)に係る所得の配分に関する割合(当該比較対象取引と当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者による販売等とが当事者の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合(その必要な調整を加えることができない場合であつて財務省令で定める場合に該当するときは、財務省令で定めるところにより計算した割合))に応じて当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算する方法

したがって、比較利益分割法の計算イメージは以下の通りとなります。

【比較利益分割法の計算イメージ】

比較利益分割法による課税イメージ

移転価格税制の立法趣旨からして、取引される製品の価格を算定することに帰結させる必要があるため、名目的には算定された利益配分結果から製品等の価格を算定することとなりますが、比較利益分割法では、算定された独立企業間としての利益配分と、実際のグループ間での利益配分との差について、それを取引価格のズレ(移転価格税制に反するもの)とみなして課税を行うこととなります。

ここで計算の前提となるグループ合算での利益は、一つの製品販売に係る利益ではなく、通常、一つの商流に係る利益を前提とすることから、一つ一つの製品価格を算定するというよりは、一つの商流で取引される製品郡の取引価格を集合体としてとらえ、そこから生じる利益配分が総じて独立企業間価格となっているかを検証することとなります。

このように、移転価格税制では、寄附金規定のようにグループ間での費用負担・費用の付け替えの問題や、譲渡・贈与される個々の資産の価格が時価か否かという枠を超えて、取引により生じるグループ合算での利益が独立企業間の状態として適正か否かを検証することにより国家間での所得配分を適正な状態にすることを求めているものと考えられます。

ただし、比較利益分割法を適用するために必要となる類似の第三者間の所得配分状況に関する情報は一般に入手できないため、適用される事例の多くは一部の金融取引(いわゆるグローバルトレーディング取引)であるといわれており、実務上適用されることは極めてまれであると言ってよいでしょう。

寄与度利益分割法とは?

概要

寄与度利益分割法も利益分割法の一種ですが、比較利益分割法とは利益分割割合の算定方法が異なります。比較利益分割法が類似の独立企業間での実際の利益配分割合を基準とするのに対し、寄与度利益分割法はそうした情報が無い場合に、独立企業間であれば成立するであろうと考えられる利益配分割合をみなして算定する方法です。

根拠法令

比較利益分割法は、法令上、以下のように定められています。

租税特別措置法施行令三十九条の十二8項1号

当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者による販売等に係る所得の発生に寄与した程度を推測するに足りるこれらの者が支出した費用の額、使用した固定資産の価額その他これらの者に係る要因に応じてこれらの者に帰属するものとして計算する方法

寄与度利益分割法の特徴と留意点

寄与度利益分割法では利益分割割合の算定方法として、「所得の発生に寄与した程度を推測するに足りるこれらの者が支出した費用の額、使用した固定資産の価額その他これらの者に係る要因」を利益への貢献割合とみなし、取引を行う両者への帰属利益を計算します。これは、費用の負担や使用する固定資産の多さは、取引において果たされる機能の重要性や負担するリスクの大きさと比例するものと捉え、独立企業間においてはそのような果たされる機能や負担されるリスクの大きさに応じて利益の配分が行われるとの考えに依拠した算定方法であると言えます。

寄与度利益分割法は、上記のような前提が満たされていれば、比較対象取引を参照しないため、いかなる取引にも適用できる汎用性があります。一方、比較対象取引を参照しない分、客観性に欠ける点が問題になるでしょう。適用に当たってはこのような特性を十分に理解しておく必要があるといえます。

残余利益分割法とは?

概要

残余利益分割法は取引当事者がいずれも一般的な同業者以上の利益(残余利益)の創出に貢献している場合に、まず残余利益を算定したうえで、その残余利益を取引当事者間で分け合うこととする移転価格算定方法です。

残余利益分割法は、高度に統合された国外関連者取引を想定しており、検証対象となる納税者グループの海外法人が高度な研究開発活動を行っている場合や、付加価値の高いマーケティング・ブランディング活動を行っている場合などに適用される算定方法です。

根拠法令

残余利益分割法は、法令上、以下のように定められています。

租税特別措置法施行令三十九条の十二8項1号

ハ (1)及び(2)に掲げる金額につき当該法人及び当該国外関連者ごとに合計した金額がこれらの者に帰属するものとして計算する方法

(1) 当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者による販売等に係る所得が、当該棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産の非関連者による販売等((1)において「比較対象取引」という。)に係る第六項、前項又は次号から第五号までに規定する必要な調整を加えないものとした場合のこれらの規定による割合(当該比較対象取引と当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者による販売等とが当事者の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異(当該棚卸資産の販売等に関し当該法人及び当該国外関連者に独自の機能が存在することによる差異を除く。)により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合(その必要な調整を加えることができない場合であつて財務省令で定める場合に該当するときは、財務省令で定めるところにより計算した割合))に基づき当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額

(2) 当該国外関連取引に係る棚卸資産の当該法人及び当該国外関連者による販売等に係る所得の金額と(1)に掲げる金額の合計額との差額((2)において「残余利益等」という。)が、当該残余利益等の発生に寄与した程度を推測するに足りるこれらの者が支出した費用の額、使用した固定資産の価額その他これらの者に係る要因に応じてこれらの者に帰属するものとして計算した金額

残余利益分割法が適用されるケース

移転価格税制においては、高度な開発活動やブランディングを行わず、受託製造や受託販売のような単純な活動を行う場合、競争によって業務対価は一定水準に収れんし、営業利益率も同業他社どうしで(ある程度の範囲に)均衡していくものと考えられています。反対にグループ連結で生じる利益水準が、そうした単純な活動により得られる利益水準を超える場合には、他社との比較優位に結びつく価値のある無形資産(開発によって得られた技術やブランド等)や、より一般化するならば分割対象となる利益の発生に寄与した要因(無形資産以外では例えば設備投資)の貢献によるものとされ、そうした要因によって生まれた利益は、その利益の創出に貢献した者の間で配分されるものと考えられています。

文責:西村憲人

5分で分かる再販売価格基準法

再販売価格基準法とは?

再販売価格基準法は、法令上以下のように定められています(2022/8/15時点。以下同様)。

【租税特別措置法六十六の四2項1号】

再販売価格基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(以下この項において「再販売価格」という。)から通常の利潤の額(当該再販売価格に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額をいう。)を控除して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)

再販売価格基準法は、原価基準法と逆のプロセスで、第三者顧客への売価から通常の利益を控除することで、グループ企業からの購入価格を算定する方法です。

再販売業者にとっては、製造業者からの仕入れ価格の交渉にあたり顧客への売価(再販売価格)が先に決まり、そこから一定の利益を得られるように逆算して仕入価格を決定するものと考えられます。そのため、再販売価格基準法では、売価から通常の利益を控除することで、グループ会社からの購入価格を算定することとしており、主に再販売業者を検証対象とする場合に用いることとされています。

なお、ここで計算上必要となる「通常の利益」については、製品を購入する再販売者と類似の独立企業を選定し、その類似の独立企業が計上している利益水準をもとに算定を行うこととなります。

5分で分かる原価基準法

原価基準法とは?

原価基準法は、法令上以下のように定められています(2022/8/15時点。以下同様)。

【租税特別措置法六十六の四2項1号】

原価基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得の原価の額に通常の利潤の額(当該原価の額に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額をいう。)を加算して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)

独立価格比準法 により、直接第三者間での製品価格を比較できればそれが最もシンプルかつ間違いありませんが、グループ間で取引される製品は独立企業間では取引されていないケースの方が多く、また独立企業間での取引があったとしてもその価格情報が公開されていない場合も多いのが実情です。そこで独立価格比準法以外の方法として、取引価格を分解して考え、価格の構成要素から間接的に取引価格を推定する方法も想定されています。その一つが、原価基準法です。

原価基準法による計算方法

原価基準法では、営利を目的とした独立企業間で成立する価格は、商品の購入価格又は製造原価に一定の利潤を乗せた価格となるということを前提としています。

独立企業間での交渉において、製造業者は通常、製品製造に係るコストに一定の利潤を乗せて販売価格を決定するものと考えられ、原価基準法はそうした第三者間での価格決定プロセスにも適合することから、主に製造業者等の販売価格を算定する際に用いることとされています。

なお、ここで計算上必要となる「通常の利益」については、製品の販売を行う製造業者と類似の独立企業を選定し、その類似の独立企業が計上している利益水準をもとに算定を行うこととなります。

原価基準法に準ずる方法

営利目的の独立企業が本業として行う取引においては、商品の購入価格や製造原価に利益を加算して販売することが想定されますが、本業の取引に付随する取引等においては、必ずしもそこで利益を得ることを前提としない場合があります。

例えば、機械設備メーカーが製品を販売する際、機械設備を輸送しただけで顧客はそれを使用することができず、設備の据付や保守・点検、オペレーターの教育などが必要な場合があります。このような場合、当該メーカーにとって製品販売により利益を得ることは本業として必要ですが、付随する役務提供においては原価をカバーできれば十分とする場合もあります。

このように、本業ではない役務提供については、特にその対価が設定されていない場合などにおいて、当局側の裁量で利益を乗せることを前提とする原価基準法ではなく、総原価のみを対価とする原価基準法に準ずる方法の適用が検討される場合があります。以下、原価基準法の実用例を解説するためにその考え方を整理しますが、これは納税者が積極的に検討してよい方法ではなく、あくまで税務当局が課税を検討する際に適用を考える方法であることには留意が必要です。

移転価格事務運営要領(第3章調査)の整理

当局が執行上参照することとなる移転価格事務運営要領では、総原価のみを対価とする原価基準法に準ずる方法について以下のように規定しています。

(企業グループ内における役務提供に係る独立企業間価格の検討)

3-11(一部抜粋)

(2) 法人と国外関連者との間で行われた役務提供((1)の定めにより、その対価の額を独立企業間価格として取り扱うものを除く。)のうち、当該法人又は国外関連者の本来の業務に付随して行われたものについて調査を行う場合には、必要に応じ、当該役務提供に係る総原価の額を独立企業間価格とする原価基準法に準ずる方法と同等の方法又は取引単位営業利益法に準ずる方法と同等の方法の適用について検討する。

 この場合において、「本来の業務に付随して行われたもの」とは、例えば、海外子会社から製品を輸入している法人が当該海外子会社の製造設備に対して行う技術指導のように役務提供を主たる事業としていない法人又は国外関連者が、本来の業務に付随して又はこれに関連して行った役務提供をいう。

(注) 「本来の業務に付随して行われたもの」に該当するかどうかは、原則として、役務提供の目的等により判断するのであるが、次に掲げる場合には、本文の取扱いは適用しない。

1 当該役務提供に要した費用の額が、当該法人又は国外関連者の当該役務提供を行った事業年度の原価又は費用の総額の相当部分を占める場合

2 当該法人又は国外関連者が当該役務提供を行う際に無形資産を使用した場合

3 その他当該役務提供の総原価の額を当該役務提供の対価の額とすることが相当ではないと認められる場合

総原価のみを対価とする原価基準法に準ずる方法の適用が検討されるのは、①役務提供取引であり、②「本来の業務に付随して行われたもの」に該当する場合であるという点がポイントになります。役務提供取引は棚卸資産取引に比べると金額規模としても小さくなりやすく、実務上も見落とされがちな論点になっています。しかし、ひとたび調査において注目されると、移転価格課税の場合は7年間と長期間さかのぼられることになり、また完全に見落とされている場合には寄附金課税(寄附金課税との関係性は別途後述)に至り、相互協議による救済の対象外になったりと、相応のリスクがあるため、役務提供に該当する可能性がある活動・やり取りがある場合には慎重な判断が求められることになります(移転価格税制上の役務提供取引の扱いについては「低付加価値グループ内役務提供」の解説を参照)

役務提供取引と寄附金課税規定

寄附金規定における時価に明確な算定方法はありません。しかし、出張支援等の役務提供に係る対価(時価)を考えた場合、当該役務に係る総費用を下回ること、すなわち赤字で役務提供を行うことは経済合理性を欠くものと考えられます。

そのため、最低限の役務対価として総原価を時価とみなして課税されるケース、すなわち上述の総原価のみを対価とする原価基準法に準ずる方法が適用されるケースが多くみられます。なお、総原価については、原則として、当該役務提供に関連する直接費の額のみならず、合理的な配賦基準によって計算された担当部門及び補助部門における一般管理費等の間接費の額も含まれることに留意すること、とされています(移転価格事務運営要領3-11(1)へ)。

 なお、上記のような課税実務を踏まえて、納税者が総原価を役務提供対価とする方法を採っているケースが多くみられます。適切な対価が法令に明記されておらず、一定の要件を満たす場合にそのような算定方法が適用され得ることが事務運営要領に記載されていることからすれば、実務上の1つの解として総原価を役務提供対価とする方法の選択も完全に否定されるべきでないでしょう。

しかし、繰り返しになりますが、元来総原価を役務提供対価とする方法は納税者が積極的に検討してよい方法ではなく、あくまで税務当局が課税を検討する際に適用を考える方法であることから、役務の内容によってはマークアップが求められる可能性がある点については留意が必要です。

文責:西村憲人

税務署所管法人に対する調査の特徴

税務署所管の海外取引法人の調査にあたっては、主に源泉所得税と海外寄附金制度・移転価格税制に関するものが中心になるものと思われますが、ここでは主に移転価格税制に関する調査について、弊所の税務調査対応での経験則から、国税局所管法人への調査との比較のもと、税務署所管法人への調査の特徴を整理してみます。

まず、大規模法人を対象とする国税局所管法人の移転価格調査にあたっては、海外取引の規模も非常に大きいケースが多いため、課税判断を行うにあたっては、入念な事実関係の確認と、慎重な課税判断が必要とされます。このような大規模な海外取引においては、わずかな対価設定のズレが多額の所得移転となることもあるため、所得移転の蓋然性の判断自体にも時間がかかり、調査の期間は長くなるケースが多く、半年から2年程かかるものまであります。

一方、税務署所管の税務調査においては、税務署の国際税務専門官の数も限られることから、より多くの納税者の適正な納税を促すためには、効率的に調査・課税処理を進めてインセンティブが働くものと想像されます。

もちろん、税務署所管法人においても移転価格の整備がなされていない場合、海外子会社との有形資産取引価格の設定や技術供与に係るロイヤリティ料率などが厳しく調査されることとはなりますが、特に出張支援に係る対価の未回収や本社サービスの対価の未回収など、明らかな経済的な利益の供与とみなされる取引について早期に寄附金として課税処理されるケースが多いように思われます。

国税局所管の大規模法人においては、ある程度移転価格の整備の進んだ面があり、移転価格課税の内容も、「税務当局との見解の相違」による課税の割合が相対的に多いように感じます。

一方、税務署所管法人による課税においては、移転価格の未整備、明らかな対価の未回収の企業に対するものが多いものと思われ、それが調査実績における非違割合の高さに表れているのではないかと考えられます。特に今後の成長が見込まれる中堅企業においては、より円滑な海外展開を進めるためにも、調査・課税を受ける前に移転価格税制・国際税務への対応を取ることが望まれます。

文責:西村憲人

寄附金課税制度とは?

移転価格税制の文脈でいう「寄附金課税制度」は、資産や役務を無償で海外子会社に提供した場合などに、本来であれば本社はその対価を受け取るべきでっあったものとして、対価相当の収益を認識させて課税する制度です。

一般に「寄附金」とは、財産等を贈与することをいい、当事者の一方(贈与者)が無償で一定の財産を相手方(受贈者)に与える意思を表示して相手方がこれを受諾することにより成立する契約といわれています(民法第549条)。税務上の寄附金の考え方も基本的には同じはありますが、税務上の寄附金は、金銭・資産等の無償贈与のほかに、役務提供の無償供与、更には、低廉譲渡、高価買入れ、債権放棄、債務免除等も含まれることから、一般的にイメージされる寄附金よりは広くとらえられています。

法人税は、各企業が事業活動を行った結果獲得した利益・所得に対して公平に課されるべきで、もし事業活動と関係の無い支出を費用として認めてしまえば、租税回避行為を許容してしまうこととなります。そのため、海外子会社などに経済合理性の無い支出や利益の供与を供与した場合には、当該支出は損金として認められず、また供与された利益に相当する額が益金に算入されることとされています。

なお、法人税法(法法)第37条は以下のように定めており、国内取引に係る寄附金について所得規模又は資本金に応じて一定の寄附金の額については損金算入を認めていますが、平成22年度の税制改正から、100%の持分を有する完全支配関係のある内国法人に対して支出した寄附金については、全額損金不算入とするとともに、当該寄附金の贈与を受けた法人ではその受増益は全額益金不算入となっています。また、国外関連者に対する寄附金についても、全額損金不算入となっています。

法法第37

内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

2  内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益の益金不算入)又は第八十一条の三第一項(第二十五条の二に係る部分に限る。)(個別益金額又は個別損金額の益金又は損金算入)の規定を適用しないとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額に算入される第二十五条の二第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

寄附金規定の概要

そもそも寄附金とは何かについては、法法第37条第7項及び8項で定められています。以下ではこの2項のポイントを見ていきます。

法法第377

前各項に規定する寄附金の額は、附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

法法第37条8項

内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。

※下線は筆者による

① 名目は問わない

「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず」と規定されている通り、損金不算入となる対象は、どのような名義・名目で支出されたものかどうかを問いません。そのため、損益計算書上どのような費目となっているかは関係なく、寄附とみなされる取引があれば損金不算入の対象となり得ます。

② 金銭や資産の支出に限定されない

寄附金の額は、「内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与」と規定されている通り、金銭での支出、資産の支出に限らず、「経済的な利益」の贈与又は無償の供与も含まれることから、反対給付(対価性)を伴わない役務の提供や技術供与など、有形・無形を問わず経済的価値のある資産・役務について全ての取引が対象になると考えられます。

③経済合理性のある贈与又は無償の供与は除かれる

寄附金の額のうち、「(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)」と規定されている通り、経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合でも、間接的に反対給付を伴うものであれば、経済合理性のある取引として損金算入が認められています。たとえば、メーカーが販売代理店に対して広告宣伝費を負担することや、見本品の贈与をすること、取引先の接待を行うことは、直接的な反対給付と伴わないものの、製品販売の増加により利益(間接的な反対給付)を得られることから、利益獲得を目的とした第三者間においても行われる行為であり、必要経費として認められています。

ただし、こうした名目による支出であったとしても、社会通念上異常な金額の供与や経済合理性を欠くような性質の支出については、これらの費用と「されるべきもの」の範囲から逸脱することとなり得ますので、際限無く広告宣伝費等の負担が寄附金の額から除外されるものではないものと考えられます。

また同様に、子会社等を整理・再建する場合の損失負担についても、寄附金の額から除外されています。再建支援を行うことが親会社にとっても利益につながることもありますので、このような場合、子会社への無利息貸付や債権放棄にも経済合理性が伴うことから、寄附金規定の対象から除外することとされています(法通9-4-1、9-4-2)。ただし、過去の判例等を考慮すると、子会社再建のための費用負担が寄附金から除外されることは容易には認められないため留意が必要です。

④寄附金の額

寄附金の額は、「当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。」と規定されている通り、その贈与の時における価額すなわち贈与資産の時価が基準となります。資産を贈与した場合であれば、その時価、役務提供や技術供与などを無償で行った場合には、その経済的な利益の額が寄附金の額となります。

⑤低額譲渡の場合も課税対象

寄附金の損金不算入では、金銭や資産の無償の贈与だけではなく、低額で譲渡した場合においても、その差額を寄附金の額としています。

ここで基準となる価額は、「その譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額」すなわち時価となっており、時価と譲渡価格との差を寄附金の額としています。

海外寄附金課税について

海外子会社等の国外関連者への寄附金の損金不算入については、租税特別措置法において以下のように定められています。国内での寄附金のように一定金額の損金算入は認められておらず、全額が損金不算入とされています。そのため国外関連取引について移転価格課税を受けた場合と寄附金課税の場合では、基本的に課税金額は変わりません。海外グループ会社との取引に係る対価設定について課税を受ければ、同じ所得に2度課税を受けるいわゆる二重課税状態となってしまいます。ただし、寄附金課税を受けた場合は相互協議のような移転価格課税を受けた場合に救済措置となる対応が取れないなどの違いがあるため注意が必要です。

措法第66条の4第3項

 法人が各事業年度において支出した寄附金の額(法人税法第三十七条第七項 に規定する寄附金の額をいう。以下この項及び次項において同じ。)のうち当該法人に係る国外関連者に対するもの(中略)は、当該法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。(後略)

また、事務運営指針 第3章(調査)においては、以下のように記載されています。

(国外関連者に対する寄附金)

3-20 調査において、次に掲げるような事実が認められた場合には、措置法第66条の4第3項の規定の適用があることに留意する。

イ 法人が国外関連者に対して資産の販売、金銭の貸付け、役務の提供その他の取引(以下「資産の販売等」という。)を行い、かつ、当該資産の販売等に係る収益の計上を行っていない場合において、当該資産の販売等が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与に該当するとき

ロ 法人が国外関連者から資産の販売等に係る対価の支払を受ける場合において、当該法人が当該国外関連者から支払を受けるべき金額のうち当該国外関連者に実質的に資産の贈与又は経済的な利益の無償の供与をしたと認められる金額があるとき

ハ 法人が国外関連者に資産の販売等に係る対価の支払を行う場合において、当該法人が当該国外関連者に支払う金額のうち当該国外関連者に金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をしたと認められる金額があるとき

(注) 法人が国外関連者に対して財政上の支援等を行う目的で国外関連取引に係る取引価格の設定、変更等を行っている場合において、当該支援等に基本通達9-4-2(弊所注:子会社等を再建する場合の無利息貸付け等))の相当な理由があるときには、措置法第66条の4第3項の規定の適用がないことに留意する。

よくある寄附金課税事例

近年、税務署所管法人への移転価格調査が増えています。税務署所管となる多国籍企業の中には、海外子会社設立から間もない企業も多いと思われます。こうした企業では、現地法人の人材が限られる面があり、本社からの主張・出向により現地法人の支援がなされることが多くなりますが、これら出張・出向による支援活動に係る人件費・旅費等が本社負担のままになっているケースでの寄附金課税の事例が多くみられます。

海外子会社への支援の目的が海外子会社の売上の獲得、利益の計上に結び付くものであれば、その海外子会社は経済的な便益を受けているため、当然親会社に対価を支払う必要があります。そのような支援に対して本社が対価の回収を行っていなければ、海外子会社への寄附行為であるとみなされ、寄附金課税の対象となります。あるいは対価の多寡が問題とされた場合には、移転価格課税の対象にもなり得ます。

特に海外子会社の利益が出ていない期間においては、できるだけ費用を本社負担にしてしまう企業も多いですが、グループ間での取引においても、両者の受益関係を明確にし、現地法人が受益者となる場合には、相応の対価を支払う必要があります。

日本で製造した製品を海外の販売子会社を介して販売する場合、海外子会社への支援は日本本社の売上のためであるとも考えられるため、出張に係る対価を取る必要は無いのではないかというご質問を受けることもあります。確かに、海外子会社への支援業務においては、相互の便益となる面もあります。しかし、海外子会社にとってその支援が無ければ第三者に支援を依頼せざるを得ない状況であるとすると、やはり対価の支払いは必要と考えられます。

対価の設定方法

寄附金課税を回避するためには何らかの対価設定が必要となります。ところが、寄附金課税の関する規定では具体的な算定方法の定めがないため、対価設定にあたっては基本的に移転価格税制を参照することになります。そこで移転価格税制に当てはめると、少なくとも上記のような出張に係る総原価は回収しなければならないと考えられます。なお、移転価格税制は、原則として取引単位で対価を検証するため、支援業務に対する役務提供対価の問題と、製品の販売に係る対価の問題は分けて考えるべきかと思われます。

上記のような出張等による支援のほか、本社側で管理業務を代行しているようなケースなども、やはり現地法人が経済的な便益を受けているので、相応の対価を回収する必要があります。いずれにしても、基本的に海外子会社との全ての取引において、移転価格税制に従って適正な対価設定を行っていかなければ、課税の対象となるというリスク認識を持つことが必要です。